フィジカルインターネット入門

―次世代物流が拓く未来

森隆行 著

いま、物流分野における様々な課題の解決策として注目を集める「フィジカルインターネット(PI)」。これは、インターネットの原理を物流に応用し、標準化・モジュール化・共有化を通じて効率化と最適化を図る概念である。 本書では、フィジカルインターネットの基礎から社会実装に向けた展望までを、具体的にわかりやすく解説する。 物流の未来を考えるための一冊。

書籍データ

発行年月 2026年5月
判型 A5
ページ数 194ページ
定価 3,300円(税込)
ISBNコード 978-4-303-16422-5

概要

 私たちの社会と経済の根幹を支える「物流」は、静かに、しかし確実に「クライシス(危機)」の渦中にあります。私たちは、モノがいつでも、どこへでも届くことを当たり前のサービスとして享受してきましたが、その「当たり前」の持続可能性が、いま大きく揺らいでいるのです。
 日本の物流は「物流クライシス」と呼ばれる深刻な局面に直面しています。これまで企業活動を支え、消費者の日常を支えてきた物流ネットワークが、今や持続可能性を失いつつあるのです。その背景には、人口減少や労働力不足、急増するEC需要、環境規制の強化など、複合的な要因が絡み合っています。
 今日の物流クライシスは、単なる業界内の問題ではなく、日本経済全体の成長を制約する国家的な課題です。その危機の本質は「人手不足」と「非効率な商慣習」に起因しており、「2024年問題」を契機に、2030年に向けて深刻度が増していくことが確実視されています。
 こうした状況において注目されているのが「フィジカルインターネット(Physical Internet、 PI)」です。これは物流の世界にインターネットの発想を導入し、モジュール化・標準化・共有化を通じて輸送や保管の効率を飛躍的に高めようとする新しい概念です。本書では、ビジネスパーソンに向けてフィジカルインターネットの基本的な考え方とその可能性を解説します。(「序章」より抜粋)

目次

刊行によせて
序 章 なぜ今、フィジカルインターネットが必要なのか
column フィジカルインターネットの標準化と国際展開 ―ISO規格化の必要性―

第1章 フィジカルインターネットの基礎と仕組み
 1. フィジカルインターネットの定義
 2. フィジカルインターネット取り組みの背景
 3. フィジカルインターネットによる物流効率化
 4. フィジカルインターネットの構成要素
 5. フィジカルインターネットの核となる3つの基盤
 6. フィジカルインターネット発展史
 7. フィジカルインターネット研究
  (1)フィジカルインターネット研究の拡大
  (2)海外のフィジカルインターネット教育・研究
  (3)フィジカルインターネット研究発展の4段階
 8. 欧米におけるフィジカルインターネット調査・実証実験
  (1)ドイツ(スマートボックス利用実証実験)
  (2)フランス(エリック・バロー教授らの共同配送実証実験)
  (3)米国
 9. IKIGAIプロジェクト
 10. 従来の物流モデルとフィジカルインターネットの違い
Interview パリ国立高等鉱業学校(PSL研究大学)エリック・バロー教授

第2章 フィジカルインターネットがもたらす4つの価値とビジネスインパクト
 1. コスト削減と生産性向上による究極の「効率性」を実現
 2. 止まらない物流を実現し「レジリエンス(強靭性)」を高める
 3. 環境負荷の低減
 4. 良質な雇用の確保とユニバーサル・サービス
Interview 早稲田大学創造理工学部経営システム工学科 教授 大森 峻一 氏

第3章 フィジカルインターネットとサプライチェーンマネジメント
 1. 物流・ロジスティクス・サプライチェーンマネジメント(SCM)
 2. サプライチェーンの誕生
 3. 社会変化とサプライチェーン
 4. サプライチェーンマネジメントとCLO
Interview YKK AP株式会社 常務執行役員CLO兼ロジスティクス部長 岩崎 稔 氏

第4章 シェアリングエコノミー/サーキュラーエコノミーとフィジカルインターネット
 1. シェアリングエコノミー
  (1)シェアリングエコノミーと従来型経済モデル
  (2)シェアリングエコノミーの定義と成長の背景
  (3)主要なシェアリングエコノミーの領域と事例
  (4)シェアリングエコノミーの社会的影響と課題
  (5)シェアリングエコノミーの未来
 2. サーキュラーエコノミー
  (1)リニアエコノミーの限界とサーキュラーエコノミーの定義
  (2)サーキュラーエコノミーにおける「2つのループ」
  (3)世界と日本の動向、そして具体的な事例
  (4)サーキュラーエコノミーの課題と未来の展望
 3. シェアリングエコノミー、サーキュラーエコノミー、フィジカルインターネットの関係
  (1)資源の効率的な活用と循環の実現
  (2)新しいサプライチェーンの構築
  (3)持続可能性と経済性の両立
  (4)サーキュラーエコノミーとフィジカルインターネット関係の事例
  (5)シェアリングエコノミー、サーキュラーエコノミー、フィジカルインターネットの関係のまとめ
Interview SBSホールディングス株式会社 代表取締役社長 鎌田 正彦 氏

第5章 輸送モード別フィジカルインターネットとの関係
 1. 内航海運とフィジカルインターネット
  (1)内航海運におけるフィジカルインターネットの活用と展望
  (2)内航海運におけるフィジカルインターネットの活用の可能性
  (3)内航海運におけるフィジカルインターネット実現への課題と展望
  (4)内航海運における共同化
  (5)内航海運におけるAI活用、DX化出遅れの現状と革新への取り組み
 2. 陸上輸送(トラック・鉄道)とフィジカルインターネット
  (1)トラック輸送とフィジカルインターネット
  (2)鉄道輸送とフィジカルインターネット
 3. 航空輸送とフィジカルインターネット
 4. モーダルシフトとフィジカルインターネット
  (1)モーダルシフト
  (2)フィジカルインターネットの概念
  (3)モーダルシフトとフィジカルインターネットの関係性
column 「競争と協調」 ―次世代物流が目指す「競争と協調」の調和―

第6章 フィジカルインターネット実現に向けたロードマップと具体的な取り組み
 1. 日本のフィジカルインターネット・ロードマップの全体像
 2. フィジカルインターネット実現に向けた6つの主要な取り組み領域
  (1)水平連携(標準化・シェアリング)
  (2)垂直統合(サプライチェーンマネジメント最適化)
  (3)物流・商流データプラットフォーム
  (4)輸送機器(自動化・機械化)
  (5)物流拠点(自動化・機械化)
  (6)ガバナンス
column Interoperability(相互運用性)

第7章 企業にフィジカルインターネットの導入をリードする人材・役職と組織
 1. フィジカルインターネット推進人材
 2. フィジカルインターネット推進組織
 3. ビジネスパーソンが取り組むべきアクション
column フィジカルインターネット実現における「多様性」の重要性

第8章 フィジカルインターネットと独占禁止法
 1. 公正取引委員会の共同物流に対する考え方
 2. 物流共同化における独占禁止法の事例
 3. EU競争法のフィジカルインターネットへの考え方
  (1)効率化・イノベーションの促進を重視
  (2)水平的協力の指針(Horizontal Guidelines)の適用
  (3)EU競争法における「水平的協力協定に関するガイドライン」の概要
 4. 米国の共同物流とフィジカルインターネットへの競争法上の視点
 5. 日米欧の共同物流・フィジカルインターネットに関わる競争法上の比較
 6. 共同物流を進めるうえでの競争法上の注意点
column フィジカルインターネット研究の国際展開 ―アジアを牽引力とした広がり―

終 章 フィジカルインターネットのその先へ
 1. スマートシティ、カーボンニュートラル社会との接続
  (1)スマートシティとの接続:都市機能の最適化
  (2)カーボンニュートラル社会との接続:環境負荷の劇的な低減
 2. 次世代のロジスティクスを担う人材育成
  (1)求められる人材の視点転換
  (2)人材育成とフィジカルインターネット実現の具体的な関係

付録1 一般社団法人フィジカルインターネットセンター(JPIC)
付録2 フィジカルインターネット成熟度モデル
付録3 フィジカルインターネット社会実装事例
付録4 最近の主な共同物流事例一覧
付録5 フィジカルインターネット関連用語集
付録6 フィジカルインターネット関連の参考文献・調査レポート

参考文献
索引

プロフィール

森隆行(もりたかゆき)
MORI Takayuki
流通科学大学名誉教授
Professor Emeritus, University of Marketing and Distribution Sciences
一般社団法人フィジカルインターネットセンター理事長
Chairman, Japan Physical Internet Center

徳島県生まれ。
1975年 大阪市立大学商学部卒業
同年 大阪商船三井船舶株式会社(現 株式会社商船三井)入社
名古屋支店、大阪支店、広報課、営業調査部、AMT freight GmbH(ドイツ)社長(1997-2001)などを経て、2006年 退職。同年 流通科学大学教授、2021年 流通科学大学名誉教授、2023年 一般社団法人フィジカルインターネットセンター理事長。タイ王国立メーファールン大学特別講師、海洋立国懇話会理事、日本ペンクラブ会員など。
著書:『新訂 外航海運概論』(成山堂書店)、『CLOの仕事』(同文館出版)、『物流とSDGs ―ビジネスパーソンのための「物流」基礎知識―』(同文館出版)、『神戸 客船ものがたり』(神戸新聞総合出版センター)、『現代物流の基礎』(同文館出版)、『海上物流を支える若者たち ―内航海運と船員のいまを知る―』(海文堂出版)、『環境と港湾 ―CNPによる日本港湾の復権にむけて―』(海文堂出版)、『コールドチェーン』(晃洋書房)、『豪華客船を愉しむ』(PHP研究所)など多数。