海の人類史

-パイオニアたちの100万年

東京大学総合研究博物館 編

【発行:東京大学総合研究博物館 /発売:海文堂出版】


私たちは 祖先たちに勝てるのか?
見えない島を目指した旧石器人
巨大マグロを捕えていた縄文人
原始×現代

人類が海と向き合いはじめてから今に至る100万年の壮大な歴史を、豊富な画像で振り返る1冊。人間と海に関心がある全ての方へ。

本書は、インターメディアテク(東京大学総合研究博物館が日本郵便株式会社と協働で運営する展示施設)における2024年度夏季特別展示「海の人類史 パイオニアたちの100万年」の展示図録・参考書である。

書籍データ

発行年月 2024年7月下旬
判型 A4変型
ページ数 160ページ
定価 5,500円(税込)
ISBNコード 978-4-303-85300-6

概要

 本展は、私たちと海との関係を人類史の視点から見つめなおそうという試みである。遠い祖先たちは、海にどう働きかけ何を得てきたのか? そして現代の私たちは、海で何をしようとしているのか?
 現代人が海から得ているものは多い。私たちの心と身体を満たす食、絶景、レジャー、各種マリンスポーツはもちろん、今や海は地球上の離れた土地どうしをつなぐ巨大な道となっており、近年においてはエネルギーやレアアースなど各種資源調達の場にもなっている。しかし霊長類の1グループとして進化した人類は、最初からこのように海と深く関わってきたわけではない。
 サルも水浴びしたり温泉につかることがあるし、川を渡るために泳ぐこともある。しかし熱帯の森林環境で進化した霊長類は、基本的に海とは無縁の存在だ。霊長類の一員である人類も、約700万年前のアフリカの森で誕生して以来、大部分の時間を、海とはさしたる関わりを持たずに進化してきた。太古の人類にとって、海は先へ進むことを阻む「障壁」ではあっても、恩恵の場ではなかった。
 しかし人類史上のどこかで誰かが、そのような海に向き合おうとし、人と海との関係性を変えはじめた。その後も試行が繰り返され、そうした先人たちが積み上げた蓄積の上に、海からの恩恵を幾重にも享受する現代がやってきた。ただしその末裔たる私たちも、海への挑戦を止めたわけではない。
 本展では、こうした人類による海の開拓史を振り返る。特に注目したいのは、開拓のはじまりと今で、それぞれを第一部・第二部として構成することとした。第一部では東南アジアと日本列島の事例を中心に、人類の初期段階の海との関わり合いについて、これまでの研究でわかってきた意外で驚きに満ちた事例を紹介する。そして第二部では、近年の海運業界が目指す新たな挑戦の一端を紹介したい。そこでは高機能の追求を超えた思想的な革新が起きているのだが、展覧会を通じて、人類と海との関係が新たなフェーズに入りつつあることを実感いただければ幸いである。(「はじめに」より抜粋)

目次

序 文
はじめに

第一部 先史時代の挑戦
 1章 人類最古の渡海 海を越えた謎の原人 ―100万年前頃―
     フローレス原人
     小型原人の島にいた動物たち
     原人はどうやって東南アジアの海を越えたか?
 2章 本格的海洋進出のはじまり
     「航海者」だった最初の日本列島人(旧石器人)
     神津島黒耀石シャトル―海上輸送のはじまり―
     沖縄の旧石器人
     世界最古の釣り針 人類の偉大な発明品
     旧石器人のイメージを変えるサキタリ洞遺跡
     旧石器人が使った舟は?
     台湾から旅立つには
     3万年前の航海 徹底再現プロジェクト
 3章 さらに遠くへ 縄文人の挑戦 ―16000~3000年前―
     伊豆諸島に築かれていた多数の拠点
     八丈島に現れた縄文人
     巨大マグロも狙った三陸の縄文人
     “完成していた” 縄文の漁具
 4章 次なる時代へ 縄文海洋進出の終焉 ―3000~2000年前―
     活発な海洋活動を物語る?骨
     縄文世界の外側で―次なる時代の幕開け―

第二部 現代のチャレンジ
 5章 新しい船をつくる―風の復権
     帆船の興隆と衰退
     ウインドチャレンジャープロジェクト
     ウインドハンタープロジェクト
    コラム1:舟と船の歴史
 6章 海上の安全と海洋環境を守る―個から組織へ
     航海のリスクと向き合う
     安全を守る組織と制度
     海難事故を防ぐ国際的取り組み
     海洋汚染を防ぐ取り組み
     さらに地球環境を守り持続可能な海洋環境へ
    コラム2:船を理解するための基礎知識
 7章 新しい船を設計する―技術革新の最前線
     より大きく、より速く、より安全に
     船は複雑な構造体
     コンピュータによる数値解析が実現する
     現代の船舶設計
     よりクリーンに、よりスマートに
 参考文献

プロフィール

海部陽介(東京大学総合研究博物館、本展企画者)  1~4章
水本健介(商船三井)                5章
佐々木吉通・浦田益明・田村兼吉(日本海事協会)   6章
村山英晶(東京大学大学院新領域創成科学研究科)   7章