環境と港湾

CNPによる日本港湾の復権にむけて

森 隆行 著

なぜ港湾として環境問題に取り組まなければならないのか、CNP(カーボンニュートラルポート)とは、そして、国土交通省によるCNP認証(コンテナターミナル)制度について、その制度設計にも深く関わった著者がわかりやすく解説する。日本の港湾復権の鍵となる、CNPへの取り組みが理解できる。

書籍データ

発行年月 2024年4月
判型 A5
ページ数 168ページ
定価 2,750円(税込)
ISBNコード 978-4-303-16420-1

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概要

 環境問題といっても、騒音や振動など特定の場所の問題、あるいは光化学スモッグのような地域規模の問題から地球温暖化や海洋汚染のような地球規模の問題まで、さまざまです。現在の環境問題における最大の課題は、1980年代からの地球温暖化問題であり、その活動の中心にあるのが、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)といえます。なかでも、1997年の京都で開催されたCOP3と2015年にパリで開催されたCOP21は、脱炭素社会の実現に向けて大きく動き出すきっかけとなりました。それはまさに歴史的転換といえるものであり、産業革命に匹敵するものです。私たちは今、その大きな変化の真っ只中にいるのです。その真っ只中にいると実感がわかないものですが、10年後、20年後に振り返ってみれば、2020年からの数年間というのは、まさに歴史が大きく変わった転換期であったと気付くかもしれません。それは、18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命に匹敵するものです。しかし、その変化は、産業革命が半世紀近くの時間を要したのに比べ、現在の変化はわずか数年で、産業革命に匹敵する変化を社会に起こしました。
 この数年間で、私たちの生活や価値観が大きく変わったことを実感している人は少なくないでしょう。テレワークによる在宅勤務が当たり前になり、週休3日、4日という企業も登場しています。また、これまで禁止されていた副業を積極的に認める企業も少なくありません。何より大きく変ったのは、価値観です。人権や環境をより重視する人が増えています。
 本書では、環境問題のなかでも近年の課題である地球温暖化問題について、港湾との関係を中心に、なぜ港湾として環境問題に取り組まなければならないのかという疑問に答えています。
 2020年10月の菅首相(当時)による「カーボンニュートラル宣言」を機に、日本の産業界も脱炭素に向けて大きく舵を切りました。こうしたなかで、国土交通省港湾局は、2022年にCNP(カーボンニュートラル)構想をまとめました。2023年3月には、CNP構想の促進のために「CNP認証(コンテナターミナル)」を公表しました。第3章ではCNPについて、第4章ではCNP認証(コンテナターミナル)について、詳しく解説を試みました。
 近年、日本の港湾は、その規模(取扱量)において相対的に地位が低下しています。もっとも、これは産業構造が変化するなかで仕方のないことだと考えます。しかしながら、同時に自動化やデジタル化において世界の港湾から大きく後れを取っており、港湾としての魅力を欠く存在になっています。そうした状況下、CNPへの取り組みが、日本の港湾復権の鍵になると確信しています。
 本書が、港湾に直接あるいは間接的に関係するすべての人にとって、環境問題の意味やその背景を理解し、CNPに取り組むために少しでも役に立てれば幸いです。(「はじめに」より抜粋)

目次

第1章 環境問題
 1.1 温室効果ガス(GHG)排出量削減への取り組みの背景
 1.2 温室効果ガスとその種類
  1.2.1 温室効果ガス
  1.2.2 温室効果ガスの種類
 1.3 COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)
  1.3.1 COP
  1.3.2 COPの歩み
 1.4 主要国・企業の環境問題への取り組み
  1.4.1 IPCC
  1.4.2 世界主要国の環境問題への取り組み
  1.4.3 日本の環境問題への取り組み
  1.4.4 企業の環境問題への取り組み

第2章 港湾と環境問題
 2.1 港湾の環境対応としてのGHG排出削減への取り組みの必要性
 2.2 環境問題への取り組みのメリット
 2.3 世界の港湾の環境問題への取り組み
  2.3.1 世界の港湾の環境対応の動向
  2.3.2 世界主要港の停泊中船舶への陸上電力供給の取り組み状況
 2.4 日本の港湾の環境問題への取り組み

第3章 CNPについて
 3.1 CNP
 3.2 CNPの対象とする範囲・領域
 3.3 港湾におけるCO2発生源
 3.4 コンテナターミナルにおけるCO2削減への取り組みの現状
 3.5 政策の実行とロードマップ
 3.6 各港のCNP実現への取り組み
  3.6.1 CNP検討会・協議会の設置によるCNP形成計画作成
  3.6.2 CNP形成計画
  3.6.3 港湾法の改正とCNP形成
 付録 CNP形成計画(フォーマット)

第4章 CNP認証制度
 4.1 標準化の重要性,標準化競争の時代
  4.1.1 国際標準化の意味と重要性
  4.1.2 国際標準化競争の時代
  4.1.3 物流分野における国際標準化の動向
  4.1.4 日本の物流システムの国際標準化への取り組み事例
  4.1.5 世界と日本の認証機関
  4.1.6 認証制度と認証機関育成の必要性
  4.1.7 企業の経営戦略としての標準化
  4.1.8 国際標準化手順モデル
  4.1.9 ISO14083
 4.2 CNP認証(コンテナターミナル)制度概要
  4.2.1 CNP認証(コンテナターミナル)制度の背景
  4.2.2 CNP認証(コンテナターミナル)制度の導入の意義と目的
  4.2.3 CNP認証(コンテナターミナル)制度の概要
  4.2.4 CNP認証(コンテナターミナル)制度の国際標準化の必要性
 付録 港湾のターミナルの脱炭素化の取組に関する認証制度要綱(案)[試行版]

港湾関係 環境用語集
参考文献
索引

プロフィール

森 隆行(もり たかゆき)

1952年 徳島県生まれ
1975年 大阪市立大学商学部卒業
  同年 大阪商船三井船舶株式会社(現(株)商船三井)入社
2006年 商船三井退職
  同年 流通科学大学教授
2021年 流通科学大学名誉教授
2023年 一般社団法人フィジカルインターネットセンター理事長

東京海洋大学非常勤講師、青山学院大学非常勤講師、神戸大学客員教授、タイ王国タマサート大学客員教授等歴任。現在、タイ王国マエファルーン大学特別講師、日本海運経済学会副会長、日本港湾経済学会理事、日本ペンクラブ会員等を務める

主な著書:『現代物流の基礎』(同文館出版)
     『大阪港150年の歩み』(晃洋書房)
     『神戸客船ものがたり』(神戸新聞総合出版)
     『神戸港 昭和の記憶』(神戸新聞総合出版)
     『水先案内人』(晃洋書房)
     『海上物流を支える若者たち』(海文堂出版)
     『物流とSDGs』(同文館出版)他