<マリタイムカレッジシリーズ>

船に学ぶ基礎力学

商船高専キャリア教育研究会 編

船を「剛体」「変形体」として扱う考え方について解説し、専門科目である船舶工学や材料力学などにつながる基礎知識を身につけることを目的とした。微分や積分を可能な限り使わず、自由物体線図から運動方程式を求め、そこから予想される運動の概略を理解することに重点をおいた教科書。

書籍データ

発行年月 2022年11月下旬
判型 B5
ページ数 228ページ
定価 2,750円(税込)
ISBNコード 978-4-303-55165-0

概要

 第1章は、量や量記号の取り扱いや本書で使う基礎的な数学の知識をまとめています。
 第2章は、運動方程式を使わず、質点の「変位」、「速度」、「加速度」の関係を調べる「運動学」について学びます。「加速度が与えられたとき、速度や位置がどのように変化するか」などの問題を求める分野を「運動学」と呼び、実際には微分や積分といった数学的手法が用いられますが、高等専門学校の低学年ではまだ習熟していないことから、あまり深くは紹介していません。
 第3章から第5章は、「剛体」に作用する「力」と「変位、速度、加速度」の関係を調べ方について学びます。一般の力学の教科書では、静止している物体についての「静力学」を学んだあと、運動する物体の運動についての「動力学」を学びます。しかし「静力学」も「動力学」もニュートンの運動方程式にもとづきますから、本書ではこれらを区別せずに、①自由物体線図をかく、②運動方程式を求める、③運動の状態について吟味する、という統一的な3つのステップを習得することをすすめます。特に、剛体の回転運動を調べるために、第4章と第5章では「剛体」の並進運動と回転運動について、それぞれの自由物体線図をかき、(並進の)運動方程式と角運動方程式を順次求めます。
 第6章では、物体の変形体としての扱い方の基本を学びます。機関系の学生は材料力学でさらに詳しく学習します。しかし航海系の学生が材料力学を学ぶことは少ないようです。荒天中の航海や荷役などにおいて船体に負担をかけず健全に運用するためには、船の変形の基礎知識が必要ですので、この章で概略を学習します。
 第7章では、仕事とエネルギーについて学び、専門での熱力学などの学習につなげます。物理で摩擦のない場合には、「力学的エネルギーの保存則」という法則が成り立つことを学びましたが、摩擦のある場合、化石燃料の燃焼などを組み込む場合には、熱力学の第一法則がより広い法則となります。船の運航においては、航海あたりの燃料の消費を抑えることで収益率を上げることができるため、船内のエネルギーの高効率化が重視されます。運動とエネルギーの関係を理解することは、これらを実現するための基礎知識です。
 海事技術者には、工学的基礎知識が求められますが、一般の物理の知識と船関係の専門書との間には小さからぬ障壁があります。本書がこの障壁を埋め、海事技術者を志す皆さんの一助なることを執筆者一同、心より願っております。

目次

第1章 船に学ぶ力学の基礎知識
 1.1 物理量あるいは量
  1.1.1 物理量あるいは量とは
  1.1.2 数値の表し方
  1.1.3 有効数字(意味のある数字)
  1.1.4 量記号と式の整理
  1.1.5 式の整理
  1.1.6 弧度法とラジアン
 1.2 三角関数
 1.3 ベクトル
  1.3.1 ベクトルの定義
  1.3.2 ベクトルの成分
  1.3.3 ベクトルの合成
  1.3.4 ベクトルの分解
  1.3.5 ベクトルの演算

第2章 力学の基本運動
 2.1 速度と加速度
 2.2 位置、速度、加速度と時刻のグラフ
  2.2.1 速度が一定の場合
  2.2.2 速度が変化する場合(図式解法)
  2.2.3 速度が変化する場合(微分による解法)
 2.3 加速度から速度を求める、速度から位置を求める
  2.3.1 一定速度から位置を求める
  2.3.2 一定加速度から位置を求める
 2.4 位置・速度・加速度の公式
  2.4.1 公式
  2.4.2 自由落下
  2.4.3 垂直投げ上げ
  2.4.4 斜め打ち上げ
 2.5 相対速度
  2.5.1 船の接近
  2.5.2 潮流と船の速度
  2.5.3 流体機械と速度三角形
 2.6 衝突とはね返り係数
 2.7 等速円運動
  2.7.1 等速円運動の特徴
  2.7.2 等速円運動の周速度
  2.7.3 加速度
  2.7.4 等速円運動の公式

第3章 並進運動
 3.1 並進運動と運動の法則
 3.2 慣性の法則
 3.3 運動方程式
 3.4 作用・反作用の法則
 3.5 いろいろな力
 3.6 系
 3.7 応用
  3.7.1 摩擦力
  3.7.2 滑車
  3.7.3 サスペンション
  3.7.4 トラス

第4章 回転運動の基礎
 4.1 回転運動と運動の法則
  4.1.1 慣性の法則
  4.1.2 角運動方程式の概要
  4.1.3 作用・反作用
 4.2 角運動方程式
  4.2.1 力のモーメントの概略
  4.2.2 慣性モーメントの概略
  4.2.3 角加速度の概略
  4.2.4 自由物体線図と角運動方程式
 4.3 力のモーメント
  4.3.1 力のモーメントの計算
  4.3.2 力のモーメントの符号と合成
  4.3.3 偶力
  4.3.4 剛体の運動のまとめ
 4.4 重心
 4.5 慣性モーメント
  4.5.1 慣性モーメントの定義
  4.5.2 いろいろな形状の慣性モーメント
  4.5.3 慣性モーメントに関する諸法則

第5章 複雑な運動
 5.1 剛体の静止(または等速直線運動)
  5.1.1 反力が発生する場合
  5.1.2 反モーメントが発生する場合
 5.2 剛体が回転せずに並進運動を行う場合
 5.3 剛体の並進運動を伴わない回転運動
 5.4 移動しながら回転する剛体
 5.5 船の運動
  5.5.1 浮力の特性
  5.5.2 横傾斜
  5.5.3 縦傾斜
  5.5.4 船の運動

第6章 船体の変形(材料力学の導入)
 6.1 船体の変形と材料力学
  6.1.1 引張と圧縮
  6.1.2 せん断
  6.1.3 曲げ
  6.1.4 ねじり
 6.2 内力
  6.2.1 材料に発生する内力
  6.2.2 仮想切断・仮想消去・仮想断面
 6.3 応力
  6.3.1 内力の比較
  6.3.2 応力の定義
 6.4 ひずみ
 6.5 弾性変形と塑性変形
 6.6 応力とひずみの関係式
 6.7 曲げ
  6.7.1 はりの内部に発生する力
  6.7.1 はりの内部に発生する力

第7章 仕事とエネルギー
 7.1 仕事
  7.1.1 仕事とは
  7.1.2 仕事をしない力
  7.1.3 負の仕事
  7.1.4 重力がする仕事
  7.1.5 ばねを伸ばすときの仕事
  7.1.6 回転の仕事
  7.1.7 摩擦力がする仕事
 7.2 動力
  7.2.1 動力とは
  7.2.2 並進運動の動力
  7.2.3 回転運動の動力
 7.3 エネルギー
  7.3.1 エネルギーとは
  7.3.2 位置エネルギー
  7.3.3 弾性エネルギー(ばねに蓄えられるエネルギー)
  7.3.4 運動エネルギー(並進)
  7.3.5 運動エネルギー(回転)
  7.3.6 力学的エネルギーの保存則
 7.4 熱力学への展開
  7.4.1 仕事と力学的エネルギー
  7.4.2 仕事と熱
  7.4.3 熱力学の第一法則
  7.4.4 熱力学の第二法則
  7.4.5 熱機関の熱効率