e-Shipping

―外航海運業務の電子化

平田燕奈 著
森隆行 監修

マースクラインで外航海運業務の電子化に取り組んできた著者が、ブッキング、船荷証券の発行、運賃の支払い、貨物の引き取りなどの電子化についてまとめた。EDI方式、API方式、ウェブサイトやスマートフォンアプリを利用したサービス、NACCSの関連業務について解説。

書籍データ

発行年月 2018年9月下旬
判型 A5
ページ数 192ページ
定価 本体2,200円+税
ISBNコード 978-4-303-16414-0

概要

 電子化またはデジタル化とは,広くアナログデータをデジタルデータに変換することを指す。具体的には,デジタルデータをつくる業務的,経営的,社会的な過程を意味する。
 外航海運関連業務は,これまでは紙媒体で行うのが基本であった。しかしながら,情報の安全性・正確性,業務の効率性などの視点から,業界全体で電子化への取り組みが着実に進んでいる。業務電子化の利点はコスト削減のみならず,リードタイムの短縮による生産性の向上,信用の増大,従来の紙では得られなかった情報の入手,さらには新規取引先の拡大に繋がっている。これだけでも,ビジネスに与える影響の大きさが推し量れる。しかし,現実には,より恐ろしい「影響」が隠されている。それは,電子化を行えない企業との取引の排除である。たとえば,EDI(electronic data interchange)を行う企業は,そのメリットを最大化するために,あらゆる取引先に対してEDI接続を要請する。それに応えられない企業は,取引に参加する資格を失う。つまり,業務の電子化による取引先の選別時代が始まったのである。
 われわれが生きるこの世界は,すでに根本的な変化を遂げる時代に入っている。デジタルテクノロジーを使いこなしているミレニアルズが顧客,従業員になる時代がやってきた。デジタルテクノロジーは指数関数的に普及し,既存の経験や意思決定の仕組みが役に立たなくなり,企業にはデジタルテクノロジーを駆使する新しいビジネスモデルが求められる。
 デジタル化と新技術はすべての業界を急速に変化させており,予期せぬ明日への準備を余儀なくされている。これは物流業界にも当てはまる。船社のビジネスモデルは貨物の移動方法を最適化することに重点を置いていた。今日のいわゆる「スマートな輸送」について言及すると,AからBへの貨物の移動だけではない。つまり,物流分野における電子化は,顧客へのシームレスなサービス,サプライチェーンでの可視性(Visibility),より効率的なビジネスの推進を意味する。
 こうした中,外航海運業界では,オープンで革新的なテクノロジーとソフトウェアソリューションを開発する傾向がみられるようになってきた。2018年1月に,コンテナ輸送のグローバルリーダーであるマースクラインとIT大手のIBMがブロックチェーン(Blockchain)テクノロジーを用いたサプライチェーンプラットフォームを運営することを宣言した。物流企業はビジネスの内部からデジタル化する必要があるが,同時に最善のソリューションを見つけるには,幅広い業界の企業間の提携が必要となる。外航海運を含む物流企業の管理者層には,業務の電子化を重要な経営戦略の1つとして念頭に置いていただきたい。
 本書では,外航海運業務のプロセスに合わせて,ブッキング(Booking),船荷証券(Bill of Lading)の発行,運賃の支払い(Payment),貨物の引き取り(Cargo Release)などの電子化ついて,紹介・解説する。第1章では,国際貿易のうち,外航海運業務に関わる必要書類と情報流についてまとめた。これらの情報流の電子化方法について,第2章ではEDI方式,第3章ではAPI方式,第4章ではウェブサイトやスマートフォンアプリ方式,第5章ではNACCSシステムとの連携について解説する。そして第6章では,メディアでも話題になっている,革新的な技術であるブロックチェーンおよびその他の先端デジタルテクノロジーの外航海運分野における応用について紹介する。
 本書はプログラマのためのEDI,APIなどのテクノロジーの専門書ではない。物流企業の管理者層をはじめ,外航海運関連業務の従事者,貿易・製造企業の輸出入業務の担当者,物流を学ぶ学生,物流業務の電子化に興味を持つ方に,外航海運業務の電子化を理解していただくことを目的としている。本書が,業務電子化の導入,あるいは商談に際して,企業側の業務担当者がIT部署やIT会社のシステムエンジニアと効率的に交渉するための,橋渡しとなれば幸いである。(「はじめに」より)

目次

第1章 外航海運業務におけるデータの流れ
 1.1 貿易関連書類
 1.2 外航海運業務フロー
 1.3 外航海運業務における情報流一覧

第2章 外航海運におけるEDI
 2.1 EDI
 2.2 EDIの利点
 2.3 EDIの特徴
 2.4 UN/EDIFACT
 2.5 ANSI X12
 2.6 XML
 2.7 EDI電文
 2.8 EDIのデータフォーマット運用基準書
 2.9 通信プロトコル
 2.10 インターネットを利用した通信プロトコル
 2.11 主な第三者プロバイダ
 2.12 EDI電文を編集・閲覧するためのソフトウェア
 2.13 インターネット利用時のセキュリティ対策

第3章 API
 3.1 APIとは?
 3.2 APIがつくられる理由
 3.3 APIが利用される理由
 3.4 Web APIの特徴
 3.5 Web APIの種類
 3.6 Web APIの連携パターン
 3.7 Web APIを利用する前提条件
 3.8 Web APIの利用手順
 3.9 Web APIの登録例:UPS APIの使い方
 3.10 Tracking API
 3.11 その他のWeb APIサービス提供会社
 3.12 APIとEDIの将来性について

第4章 船社のオンラインサービスおよびモバイルアプリ
 4.1 主要船社のオンラインサービス
 4.2 オンラインサービスの利用手順
 4.3 モバイルアプリによるサービス

第5章 NACCS関連業務
 5.1 NACCSの導入手順
 5.2 NACCSの回線
 5.3 NACCSにおけるEDIの接続形態とネットワーク構成
 5.4 NACCS EDI 電文
 5.5 EDIFACT対象業務一覧

第6章 外航海運業務における新テクノロジー
 6.1 デジタル化をドライブするIoT
 6.2 注目を浴びるブロックチェーン
 6.3 重要になるセキュリティ

コラム1 ebXML用語の解説
コラム2 コンテナ貨物総重量の確定方法
コラム3 EDIの2024年問題

付録1 外航海運業務関連国連標準メッセージ(UNSMs)機能定義一覧
付録2 EDI仕様書

プロフィール

【著者】
平田燕奈(ひらたえんな)
中国東北財経大学卒業。神戸大学経営学研究科博士後期課程修了。マースクラインAS TradeLens北アジアコマーシャルマネージャー。経営学博士。
1998年,A.P. Moller-Maersk Groupに入社。カスタマーサービス,営業,航路管理,マーケティング,Eコマース部門において管理職を歴任。NACCS業務やブッキング業務など,数々の自社システム電子化推進プロジェクトを成功に導く。
2018年5月より,Maersk社とIBM社の協業ユニットであるTradeLensにおいて,ブロックチェーン物流プラットホームの開発推進に従事。

【監修者】
森隆行(もりたかゆき)
大阪市立大学商学部を卒業後,大阪商船三井船舶株式会社(現・商船三井)に入社。2006年,商船三井を退職し,流通科学大学教授に着任。現在に至る。
日本海運経済学会副会長
著書:『現代物流の基礎』(同文館出版),『大阪港150年の歩み』(晃洋書房),『神戸港 昭和の記憶』(神戸新聞総合出版)他