魚で、まちづくり!

―大分県臼杵市が取り組んだ3年間の軌跡

行平真也(大島商船高等専門学校商船学科准教授)著

著者が水産業普及指導員として関わり、自治体、地域の人たち、漁協関係者などと一体となって行った、カマガリやタチウオ、かぼすブリなど、臼杵市の特産魚を活かした様々な取り組みを紹介。地方創生に取り組む関係者をはじめ、まちづくり、まちおこしに興味がある人の参考になる一冊。

書籍データ

発行年月 2017年6月
判型 A5
ページ数 112ページ
定価 本体1,500円+税
ISBNコード 978-4-303-56330-1

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概要

 地方創生という言葉が掲げられてから、地域振興や地域活性化という言葉をよく耳にするようになりました。
 「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みとして、総務省が2009年度から実施している「地域おこし協力隊」の制度も、地域に定着してきたように思います。地域おこし協力隊は、現在(2016年度)、886もの自治体に3978名が配属され、慣れない土地で、地域活性化に向けた活動に取り組んでいます。市報や新聞、地元のテレビなどで、地域おこし協力隊の赴任が伝えられるのを見るたびに、地域を何とかしてほしいという地域住民の方の思いが伝わってくるように感じます。
 地方創生の時代にあって「地域振興」を行うことはまさに御旗であり、地域が元気になってこそ、日本全体の活力が向上するのだと思います。
 さて、筆者は元々、大分県庁の職員で、水産技術者として、水産振興課や水産試験場(現・大分県農林水産研究指導センター水産研究部)に勤務していました。2013年4月に、縁もゆかりもなかった大分県臼杵市に水産業普及指導員として配属され、3年間、臼杵市の水産振興・地域振興に取り組んできました。
 水産業普及指導員という仕事をご存知ない方も多いかと思います。水産業普及指導員の多くは都道府県の職員で、いわゆる地方の出先機関に所属していることがほとんどです。普段どんな仕事をしていますか?と問われても、地域ごとの漁業実態や課題が異なるので、端的に答えることは難しいのですが、あえて言うならば、地域における漁業の課題を解決することが仕事と言えるのではないかと思います。私の働いていた大分県庁では13名の水産業普及指導員がおり、それぞれ担当の漁村で水産振興を行っていました。また、一次産業の分野ごとに農業、林業、畜産業でも普及指導員がおり、地域で懸命に働いています。
 さて、私の担当地区である大分県臼杵市はタチウオ漁業が盛んで、タチウオの共同出荷体制を構築した成果により、農林水産大臣賞や、農林水産祭において天皇杯を受賞するなど、華々しい実績を上げていました。しかし、大分県内で漁業というと日本有数のブランド魚となった「関あじ・関さば」が漁獲される大分市佐賀関や、演歌歌手の鳥羽一郎さんの「男の港」でも歌われた漁港を有する佐伯市が有名で、臼杵市の漁業は主力であるタチウオが福岡県に出荷されることもあり、大分県内での知名度はあまり高くありませんでした。
 私自身、臼杵市の担当になったとき「臼杵市の漁業って何があるんかなぁ……」と最初は思ったものでした。
 しかし、現状はイメージと異なりました。本当に素晴らしい魚、地域の宝がそこにありました。誰かが光を照らしてくれるのをひっそりと待っているようでした。その地域の宝を見つけたとき、私の役割はそれを活かし、磨き、そして広めていくことと確信しました。
 本書は地域の宝を活かした臼杵市における水産振興・地域振興の取り組みをまとめたものです。地域振興をこうやるべきだと書くつもりはありませんし、書ける立場でもないと思います。ただ、地域の宝である地元の魚に注目し、懸命に努力した臼杵市の漁業者や漁協職員、臼杵市職員や臼杵市民のみなさまの活躍を未来に残すとともに、少しでも地域を何とかしたいと思われている方にわずかでも参考になれば……という思いで書かせていただきました。
 本書で取り上げた事例の多くは、研修会などで漁業者や漁協職員、自治体職員の方に紹介してきました。これなら自分のところでもできそうだと感想を語られ、張り切って帰られる姿を何度も見ています。ある研修会で話をさせていただいた福岡県の漁業者は、同じ話を違う仲間にもしてほしいと、2年続けて臼杵市にお越しくださいました。
 地方においてますます高齢化が進んでいるなかで、漁村では漁業から引退する方も増えています。10年後、漁村がどのような光景になっているのかを想像できるでしょうか。
 まさに待ったなしの状況のなか、全力で地域の宝を未来につないでいかなければなりません。(「はじめに」より抜粋)

目次

はじめに

第1章 大分県臼杵市について
 1.1 食の宝庫
 1.2 臼杵の魚はなぜ美味しいのか

第2章 臼杵産の魚を気軽に購入できる取り組みを
 2.1 うすき海鮮朝市の始まり
 2.2 漁村女性によるさばきサービスと朝食提供
 2.3 高校生がさばきサービスに参加
 2.4 朝市で朝食を
 2.5 海鮮食堂うすきオープン
 2.6 朝市でミーティングを

第3章 特産魚カマガリの知名度向上の取り組み
 3.1 カマガリとの出合い
 3.2 カマガリの知名度向上を目指す
 3.3 熱意を第三者に伝える
 3.4 カマガリ炙り丼と加工品の開発
 3.5 カマガリ元年
 3.6 臼杵カマガリバーガーの誕生
 3.7 臼杵カマガリバーガーの突破口
 3.8 市内での商品化を実現する
 3.9 カマガリを地域一丸となって広める
  3.9.1 臼杵市畳屋町のカマガリバーガー
  3.9.2 津久見高校海洋科学校、臼杵カマガリバーガーでグルメ甲子園に出場
  3.9.3 カマガリラーメン
 3.10 カマガリを学校給食へ
 3.11 カマガリのいま

第4章 タチウオで地域振興
 4.1 地域の誇りタチウオ漁業
 4.2 共同出荷への舵取り
 4.3 タチウオを観光資源に
 4.4 タチウオの刺身を観光客に提供したい

第5章 他の魚への取り組み―小さい取り組みを重ねる
 5.1 かぼすブリを防災缶詰に
 5.2 マイナー魚に注目したレースケによる地域振興
 5.3 臼杵祇園祭にかけて、ハモを推してみる

第6章 産地ブランド力を高める
 6.1 うすき海のほんまもん漁業推進協議会
 6.2 うすき産」シールをつくる
 6.3 臼杵ブランド推進室の立ち上げ
 6.4 Uターンしてきたタチウオ加工業者
 6.5 新規漁業就業者を確保する―臼杵市漁業担い手育成交付金

第7章 市内中心部に魚食レストランをつくる
 7.1 サーラ・デ・うすきリノベーション計画
 7.2 魚食レストランへのリノベーション
 7.3 筆者、退職を決心する
 7.4 魚食レストランのオープン
 7.5 液体式急速冷凍機の活躍

第8章 農村で魚を活かす―うすき100年弁当ができるまで(寄稿:小金丸麻子)
 8.1 吉四六さん村グリーンツーリズム研究会
 8.2 うすき100年弁当の誕生
 8.3 臼杵の人に愛されるお弁当に

あとがきに代えて―臼杵市長から

プロフィール

行平 真也(ゆきひら まさや)
1984年,福井県に生まれる。大分県大分市出身。
国立高等専門学校機構大島商船高等専門学校商船学科准教授。
長崎大学水産学部水産学科を卒業後,九州大学大学院生物資源環境科学府修士課程に進学するものの,大分県庁(水産職)採用により,在学1年で中退。
2008年より大分県庁に入庁。大分県農林水産部水産振興課,大分県農林水産部農林水産研究指導センター水産研究部を経て,大分県中部振興局農山漁村振興部において臼杵市担当の水産業普及指導員となり,3年間臼杵市の水産振興・地域振興にかかわる。
入庁当時から,趣味としてさまざまな研究を行っており,2010年に福岡工業大学総合研究機構環境科学研究所客員研究員に就任。また,2015年には和歌山大学大学院システム工学研究科博士後期課程を修了し,博士(工学)の学位を取得。
その後,臼杵市の魅力に惹かれ,2016年3月をもって大分県庁を退職。
2016年4月より山口県大島郡周防大島町にある国立高等専門学校機構大島商船高等専門学校商船学科の助教に就任。2017年4月より現職。
1か月に2回は大分県臼杵市を訪れ,地域との継続的な交流を行い,臼杵産の美味しい魚や地酒に舌鼓を打っている。