船舶の運航技術とチームマネジメント

小林弘明(東京海洋大学名誉教授) 著

「船舶運航技術の解説」「ブリッジチームマネジメント」「BTM/BRMの技能養成訓練」の3部からなる。船舶運航の現場で海技者に要求される技術の全般について解説する。長い時間をかけて育まれた安全運航に必要な技術を整理し、現場の海技者が発揮する技術を体系化、全体像を明らかにし、その重要性を指摘する。

書籍データ

発行年月 2016年4月
判型 A5上製
ページ数 288ページ
定価 本体3,600円+税
ISBNコード 978-4-303-21930-7

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概要

 本書は3部構成になっています。第I部の「船舶運航技術の解説」に先立ち、序章を掲載しています。その理由は、本書の目指している「システムを運用する人間の役割を明らかにする」を考える発端となる背景を理解していただくことにあります。読者にはぜひ序章を読んでいただき、本書がこれまでに出版されている関係書と立場を異にする理由をご理解願いたいと考えています。
 本書は、船舶運航の現場で海技者に要求される技術の全般について解説することを目的としています。長い時間をかけて育まれた安全運航に必要な技術を整理し、現場の海技者が発揮する技術の重要性を指摘しています。海技者の努力により形成されてきた技術を体系化し、その全体像を明らかにする一歩となることを願っています。
 第I部においては、まず、船舶運航の目的である、安全性の維持に必要な条件を、人間の実行する技術と、人間に技術の達成を要求する環境の条件との関係から考えることとなります。続いて、人間が実行すべき技術の内容について分析を行うこととなります。安全運航に必要なすべての技術を、9項の要素となる技術の集合として整理できることを示します。各技術毎に内容を解説し、運航の現場で実行すべき内容を示しています。そして第4章では、船舶の運航に必要な技術を要素となる複数の技術に分解することにより、従来から問題とされてきた関係する分野に、新しい展開ができることを紹介しています。
 第II部においては、近年とくに注目されているチームマネジメント(Team Management)について解説しています。安全運航におけるチーム活動の意義、そしてチームが必要な機能を発揮するために必要な条件を解説しています。チームマネジメントを達成するために必要な機能は、船舶運航においてのみ必要な機能ではなく、他の分野においても、チームで1つの目的を達成するために必要な機能です。チームによる活動は、現代社会においてあらゆる分野で実施されています。この点から、チーム活動を実行している、あらゆる分野の人々に読んでいただきたい内容です。
 第III部では、チームマネジメントの技能を養成するために十年あまり実施している研修内容を紹介しています。ここに紹介する研修は日本海事協会(Class NK)において、ブリッジチームマネジメント(Bridge Team Management)に関する研修の認定基準として採用されているものです。
 文頭に書いたとおり、海技技術に関する本書の視点は、従来の書籍と異なる点が多くあります。そこで、本書で示す内容を端的に理解していただくために、重要事項を各章や節の末尾にまとめてあります。この重要事項をよりどころとして読み進めていただければ、理解を早める一助となると考えています。また、重要事項には、実務において実行すべき機能が抽出されています。この点から、運航の現場で活用できるように、重要事項をまとめ、一覧として本書の末尾に掲載しています。(「まえがき」より抜粋)

目次

序章

第I部 船舶運航技術の解説
 はじめに
 第1章 安全運航の実現に関係する要因
  1.1 航行環境の困難度
  1.2 航行の困難度を変化させる要因
  1.3 海技者の船舶運航技能
  1.4 安全運航の成立条件
  1.5 安全な船舶運航に必要な技術
  1.6 対象とする運航局面
 第2章 船舶運航技術の分析
  2.1 航海計画の立案
  2.2 見張り
  2.3 船位推定
  2.4 操縦
  2.5 航行規則などの法規遵守
  2.6 情報交換
  2.7 機器取り扱い
  2.8 異常事態
  2.9 技術と人を管理
 第3章 経験の少ない海技者に多く見られる不十分な行動特性
  3.1 計画の作成
  3.2 見張り
  3.3 船位推定
  3.4 操縦
  3.5 航行規則などの法規遵守
  3.6 情報交換
  3.7 機器取り扱い
  3.8 技術の管理
 第4章 要素技術展開の意義と活用
  4.1 要素技術展開の意義
  4.2 技術と技能
  4.3 海技者の技能の限界と拡大
 おわりに

第II部 ブリッジチームマネジメント
 はじめに
 第1章 安全運航のための必要技術
 第2章 安全運航の実現に関係する要因
  2.1 航行環境の困難度
  2.2 海技者の船舶運航技能
  2.3 安全運航の成立条件
  2.4 安全運航状態を実現するためのブリッジチームの位置付け
 第3章 ブリッジチームマネジメント概念の提案の経緯
  3.1 BRMとBTMの定義
  3.2 航空機におけるチームマネジメント概念の導入
  3.3 船舶におけるチームマネジメント概念の導入
 第4章 ブリッジチームマネジメント
  4.1 BTM訓練の必要性
  4.2 ブリッジチーム編成の理由と目的
  4.3 チーム活動の特殊性と必要な機能
  4.4 コミュニケーション(Communication)
  4.5 コーポレーション(Cooperation)
  4.6 チームリーダーが実行すべき機能
  4.7 チーム活動の実行例
  4.8 キャプテンブリーフィング
  4.9 情報交換の方法
  4.10 チーム活動の実施例から見た活性化の必要条件
  4.11 資源の有効活用
  4.12 まとめ:BTMに必要な技能
 おわりに

第III部 BTM/BRMの技能養成訓練
 はじめに:知識と技能
 第1章 訓練体制
  1.1 概要
  1.2 教育訓練の目的
  1.3 BTM訓練の目的を達成するための条件
  1.4 研修の体制
 第2章 BTM訓練の構成
  2.1 コースの時間割
  2.2 教育訓練の詳細
 第3章 BTM訓練の事例
  3.1 訓練の実施
  3.2 操船シミュレータによる実技演習例
 あとがき

参考文献
索引
重要事項一覧

プロフィール

小林 弘明(こばやし ひろあき)

工学博士(東京大学)
東京海洋大学名誉教授
1968年 東京商船大学航海学科卒業
1971年 大阪大学工学部造船学科卒業
1973年 広島大学大学院修士課程修了

〔海技に関する学会活動〕
1980年より、以下の国際学会、国内学会において、幹事、会長を歴任した。
国際海事シミュレータ会議(IMSF)アジア・パシフィック地区幹事、会長
国際海技教育者会議・シミュレータ専門委員会(INSLC in IMLA)幹事
海事システムと安全に関するアジア国際会議(ACMSSR)代表
日本航海学会(JIN)理事、会長

〔海技に関する教育・訓練の業績〕
2003年より2006年まで毎年、JICA専門家派遣により、ベトナム海事大学、インドネシアにおける海事大学において、海技の教育方法に関する研修を実施。また、フィリピン、インド、マレーシア、トルコの海技者養成施設の教官に対し、研修を実施した。
2000年より2016年まで、国内において、大手船社を含む我が国の船社5社に対し、船社所属の海技者の教育訓練を実施中。
ClassNK(日本海事協会)の認証基準である、2件の海技に関する標準教育訓練コースの原案作成。