広島修道大学学術選書64

eラーニングは教育を変えるか

―Moodleを中心としたLMSの導入から評価まで

大澤真也・中西大輔 編

日本図書館協会選定図書

eラーニングの実施に必要なLMS(Leaning Management System)は、そのことばが示す通り、学習を管理することができます。本書は、Moodleを中心としたLMSについて、その導入から、実践事例、教育効果の測定・評価までを詳しく紹介。また、LMSで利用できるツールやMoodle以外のLMSも紹介。さらに、Moodle環境の構築について、ゼロから解説。

書籍データ

発行年月 2015年9月
判型 A5
ページ数 272ページ
定価 2,750円(税込)
ISBNコード 978-4-303-73478-7

amazon 7net

概要

 筆者の勤務校(広島修道大学)でeラーニングの活用が注目を集めたのは2007年頃のことでした。当時から商用のeラーニングシステムが導入されていましたが、それを授業で活用しているのは、ほんの一部の教員に過ぎませんでした。2010年度にはオープンソースであるMoodleも導入し、学内でLMS(Leaning Management System)を普及させるための活動を数多く行ってきました。これらの活動のお陰もあってか、LMSを利用する教員の数は増加しましたが、それでもまだ十分に活用されているとはいえません。多くの大学教員(特にいわゆる文系と呼ばれる人たち)にとっては、まだまだLMSは遠い存在です。LMSなんて訳のわからないものを無理して使わなくたって、そこにホワイトボードとマーカーさえあれば何とかなるのです。
 筆者は、MoodleがベストのLMSだとは思っていません。でも莫大なお金をかけて環境だけを整備して、LMSをはじめとしたeラーニングを活用するためのサポートをする気がないのであれば、無料で使えるMoodleでよいと思うのです。LMSということばが示す通り、LMSは学習を管理することができます。単純な使い方であれば授業で用いる提示資料を置いておくだけでもかまいませんし、少し時間に余裕が出てきたら学生が授業外で学習できるような教材や小テストを作成してみるとよいでしょう。そして、このようなツールを利用することの最大のメリットは、すべてが記録に残るということです。どんなに整理整頓が苦手な人でも、Moodleにログインさえすれば、そこに授業に関するすべての記録が残っています。たとえば、語学の授業だと学期末試験だけではなく、授業内での活動をいわゆる「平常点」としてカウントして総合的に評価した方がよい場合があると思います。このような時でも、オフライン・オンラインを問わず活動を評価し点数を付けておくだけで、教員と学生はいつでもその学習履歴を見直すことができます。従来の対面式の授業であればわかりにくい「平常点」が可視化されるというのは、とても素晴らしいことだと思います。これだけでも、MoodleのようなLMSを利用する価値はあると思うのですが、多くの人たちは、いまだにその便利さがわかっていないようです。
 本書で実現したかったこと及び主張したかったことを簡潔にまとめると、次の3点になります。

(1) LMSの導入を成功させるためには、環境面の整備だけではなく、人的なサポートが欠かせない。
(2) LMSを使ってみたくても使い方がわからない人がいる。LMSを活用した実践例の蓄積をしていく必要がある。
(3) LMSは万能薬ではない。利用しっぱなしにするのではなく、その効果を適切な手法を用いて検証すべきである。

 Moodleに限らずLMSを好きな人の中には、無条件にシステムを賞賛してしまう人がいます。けれども、無理してLMSを使わなければいけないのであれば、それは本末転倒です。たとえば対面式の授業で、紙を使えばできるのに、わざわざLMSを使って操作を複雑にしてしまっていないでしょうか。あくまでも状況と場面に適したLMSの活用を考えればよいだけで、必要がなければ使わなければよいのです。そして使うのであれば、その効果を何かしらの形で検証した方がよいのはいうまでもないでしょう。
 このように、本書は既存の類似本では扱われてこなかった話題を取り上げることを心がけています。この本が一冊あれば、明日にでもMoodleをインストールして授業を構築することができてしまうかもしれません。特に、今までLMSに興味を持っていたけれど始めるきっかけがつかめなかった人たちが、本書を読むことによってやってみようと思ってくれるのであれば、これ以上の喜びはありません。

 以下は、各章の概要です。流れを意識して構成していますが、どの章から読み始めてもかまいません。
第1章 eラーニングの現状
 既存の文献(書籍・論文など)をもとに、日本国内におけるeラーニングの現状を概観しています。
第2章 LMSの活用
 筆者がメンバーとして参加してきた研究プロジェクトチームで開発に携わった、LMSで利用できるツールを紹介しています。また番外編として、Moodle以外のLMSも紹介しています。
第3章 高等教育機関におけるLMS導入事例
 筆者の勤務校である広島修道大学で、Moodle導入に至った経緯及び導入後に行ってきた取り組みを紹介しています。
第4章 LMS実践事例集
 全国各地の大学で、Moodleを活用した実践を行っている先生方の実践例を紹介しています。
第5章 LMSを利用した教育効果測定の試み
 広島修道大学でMoodleを利用して行った授業を対象に、その教育効果の測定の試みを紹介しています。
第6章 LMSを利用した実践における効果の測定に向けて
 LMSを利用した実践を行い、その効果を測定・評価する際に、重要なことについて解説しています。
第7章 ゼロからはじめるMoodle
 この章さえ読んでしまえば、明日からでもMoodle環境を構築することができるかもしれません。Maharaとの連携についても解説しています。(「はじめに」より抜粋)

目次

第1章 eラーニングの現状
 1.1 eラーニングとは?
 1.2 日本国内におけるeラーニングの現状
 1.3 日本国内におけるeラーニング活用に向けての支援
 1.4 海外との比較を通して見る高等教育機関におけるeラーニングの未来

第2章 LMSの活用
 2.1 Moodleについて
 2.2 e問つく朗
 2.3 一筆柿右衛門
 2.4 Culture Swap
 2.5 Mahara
 2.6 番外編:その他のLMS

第3章 高等教育機関におけるLMS導入事例
 3.1 Moodleの導入に至るまで
 3.2 Moodle普及に向けての活動
 3.3 Moodleの更なる活用に向けて
 3.4 Moodle活用における課題
 3.5 導入における障壁
 3.6 eラーニング・ユーザとしての教員を対象とした調査

第4章 LMS実践事例集
 4.1 英語教育におけるLMS実践
  事例1 Moodleを利用して学習内容を可視化する
  事例2 映画を通して行う英語学習
  事例3 Moodleの活動/リソースを活用した授業展開
  事例4 予習・授業・復習のサイクルをきちんと作る授業
  事例5 Moodleを利用した異文化交流プロジェクト
  事例6 Moodleを部分的に活用した対面授業 ―活動のアナログ化とデジタル化を意識して
  事例7 PoodLLを利用した教室外スピーキング活動
  事例8 4択問題の多目的利用 ―LMSだけのために問題データを入力しないで済む方法
  事例9 Moodleを活用した英語学習支援:プレイスメント・テストから到達度テストまで
 4.2 その他の分野における実践
  事例10 初年次情報リテラシー科目における実践例
  事例11 授業形態や学生の学習環境に応じたMoodleの活用
  事例12 心理学専攻におけるMoodleを利用した実践
  事例13 Moodleによるeラーニング教材の提供―国際関係史の場合

第5章 LMSを利用した教育効果測定の試み
 5.1 教育効果の測定
 5.2 2012年度の2つの授業データから見るLMS(Moodle)利用による教育効果
 5.3 複数授業の分析
 5.4 授業の分析結果
 5.5 授業ごとの分析結果
 5.6 教育実験の必要性
 5.7 「目の輝き」は測定できるか
 5.8 実験を行う際の倫理的問題をどうクリアするか
 5.9 教育効果を測定する変数
 5.10 おわりに

第6章 LMSを利用した実践における効果の測定に向けて
 6.1 目的に応じた研究手法の選択のために
 6.2 LMSを利用した教育における成果の測定及びその評価
 6.3 LMSを利用した実践の効果の測定・評価に関する参考文献

第7章 ゼロからはじめるMoodle
 7.1 Moodle導入の形態
 7.2 VPSを利用したMoodleサーバ構築
 7.3 発展編:MaharaをMoodleと連携させる