人と船そして海

荒川 博・大杉 勇 編

航海士として約10年のあいだ商船に乗り、その後は海事史研究の傍ら執筆や翻訳、イラストなどを手掛け、平成13年に亡くなった著者の、遺稿とも言える作品を書籍化。アメリカを見つけた男や酒浸りになった英雄、炎の提督、海のロビンフッド、国を救った海賊、などが登場する、潮の香り満載の29編の興味深い実話を収録。

書籍データ

発行年月 2013年12月
判型 四六
ページ数 256ページ
定価 本体1,600円+税
ISBNコード 978-4-303-63428-5

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概要

 某日、クロネコが部厚い原稿の束を運んできた。
 東京商船大学五回生 故・田中 航(本名 紀之)氏の遺稿ともいうべきものが、故人クラスメートの大杉 勇(元航海訓練所・所長)から送られて来たものだった。
 彼からは、故人には係累はなく、クラスメートの好誼で何らかの機会に預かったもので、故人のためにも何とか著書としてまとめられないかと伝言があった。
 ざっと一読のあと、長いあいだ書棚の隅に寝かせてあったのを、ふと見つけ出し、海文堂に出版の件につき相談してみた。
 ありがたいことに、故人は同社にはかなりの縁があり、「海技と受験 船長コース」などに連載ものを寄稿したり、時にはふらりと同社に立ち寄って同姓の田中編集長(当時)と歓談したりして、まんざら知らない仲でもなかったことから、快く出版を引き受けていただくことができた。
 さて故人には、『帆船時代』『蒸気船』『戦艦の世紀』(いずれも毎日新聞社刊)の三部作がある。
 それぞれのあとがきから拾ってみると、東京商船大学を卒業して約十年間、航海士生活を送った。
 その間、船の誕生から発展までに興味を持ち、機会あるごとに資料を蒐集した。
 船員をやめて絵描きに転向し、資料を整理して、自分なりの船の歴史を書きためてきた。
 潮の香を嗅いだことのある男が、往年の船について愛惜の情をこめて書きつづったものが『帆船時代』という。
 船の歴史の流れの上で、人力で漕ぐ船、自然の風を利用した帆船、そして動力を備えた船と発展した。その動力船に焦点をあてたのが『蒸気船』となった。
 船の歴史の第三作目として「軍艦」を書くよう勧められ、戦列艦時代から第一次大戦にいたるまでを解説したのが『戦艦の世紀』と述べられている。
 三部作に共通しているのは、平常、船舶や海洋に関係のない方々にも興味をもって読んでいただけるよう配慮されていることである。
 そしてここに遺作として『人と船そして海』ができ上がり、前三作品とは異なる面から、海と人間の物語として多くの皆様に読んでいただけることを、関係者の一人として願うものであります。(編者「あとがき」より抜粋)

目次

第一章 船と習慣
 ハンバーグ事始め―昔の船旅
 いろ模様―船の色彩
 ハンモック考―網の寝床のここちよさ
 避雷針物語―神の与えた鉄の棒
 郵便ポストは亀の甲―ガラパゴス諸島と船乗り
 死馬祭とは……―海の男のレクリエーション
 救命衣今昔―命の綱の話
 珍獣チンチラ始末―女王、毛皮に参る
 煙突物語(上)―中は犬小屋
 煙突物語(下)―エムデン号のトリック

第二章 船と人間
 アメリカを見つけた男―レイフ・エリクソン小伝
 快男子バルボア―剣豪、太平洋を見る
 月を呪う人―罠を仕掛ける悪党ども
 ネルソンの死(上)―トラファルガルの悲愁
 ネルソンの死(下)―英雄酒びたりとなる
 怪傑ジョン・ポール・ジョーンズ―海のロビン・フッド
 リンドと高木―ビタミンCとB
 学者海賊ダンピア―海賊、島々に名を残す
 セルカークという男―ロビンソン・クルーソーのモデル
 船とアメリカ人―彼らは海洋民だった
 ジーン・ラフィット物語―海賊、国を救う
 炎の提督ファラガット―「機雷がなんだ、乗り切れ」
 幸運児フィップス―海で一山当てた男
 フルトンという男―「汽船の父」になったアメリカ人

第三章 神秘と怪奇
 和船の遭難―船を救った老いたる手
 戦争を誘発した船―メイン号爆沈事件
 将軍と潜水艦―ジョージ・ワシントンの海上ゲリラ戦
 コペンハーゲン号の失踪―練習帆船行方不明
 水葬―悠久の自然のふところへ
 怪奇と迷信―夜目のきく男その他
 メドゥサ号の筏―フランス海軍の汚点