人の考え方に最も近いデータ解析法

―ラフ集合が意思決定を支援する―

森典彦・森田小百合 共著

人はどのように思考するのか、そのしくみを述べるとともに、問題解決や目的達成の指針を見つける手段として、人の考え方に最も近いラフ集合を用いた解析法を提供する。数式を使わず、豊富な図とイラストでやさしく解説した、実業の場で活用できる実用書。分析実施例も多数掲載。「ラフ集合極小条件計算ソフト」別売。

書籍データ

発行年月 2013年8月
判型 A5
ページ数 184ページ
定価 2,200円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72396-5

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概要

この本からは大きく分けて2つの知識を身につけることができる。

1つは、さまざまな問題の解決や目的の達成に向けて、指針を見つけるための「手段」を獲得することである。そしてもう1つは、そもそもわたしたちの思考はどんなプロセスを経て進められるのか、その「しくみ」を理解できることである。

実はこの本は前者の、問題解決や目的達成の指針を見つける手段を提供し、実業の場で活用してもらうという、実用書のつもりで計画された。そこで「問題は要するにこういうことだ、だからこれこれのことさえすればいい」という形で指針がコンピュータの計算によって見つけられることを丁寧に書いて示した。

しかし一方で、この本を単なる手引き書にはしたくなかった。指針を見つけるに至るまでの論理の筋をきちんと示したいと思った。そのために論理の筋の元になっている人の思考のしくみを分かりやすく解説することにした。その結果、人の思考のしくみを解説した部分は、それだけで「なるほど、考えるというのはそういうことだったんだ」と理解できるし、さらに本書の提供する計算法は、実は人の考え方に最も近いものであることをわかってもらえると思う。また簡単な問題なら自分の思考が正しいかを手計算で検証することもできるので、読者の知的興味に応えるものとなったと信じる。

この本は理屈っぽいことを扱っているにもかかわらず、読み物ふうでもある。すくなくとも著者はそのつもりで努力して書いた。読み物というからには、すらすらと後戻りすることなく読んで理解できるようでなければならない。そのためには、たまに話題が脇道に逸れることがあっても、論旨が一本道をたどるようになっていなければならない。教科書のようにいくつかの章を並べてそれぞれを解説するというやり方だと論旨が拡がるので読み物にはなりにくい。

その点、この本の論旨は一本道である。元来、人が日常間断なく行っている思考には3つの型があることをこの本はまず説明するが、そのうちの2つの型は不確かな思考であって、確かな思考経路は論理に従う1つの型のみであることをこの本で示している。その論理に従う思考こそが最も基本的な、そして最も頻繁に私たちが無意識のうちに行っているものである。この本はそれを取り上げ、詳しく調べ、そのプロセスを手計算に移し、さらにそれの規模を拡大するために計算機を用いる、という一本道の論旨で通したから、読み物になり得るはずである。

この本の「手段」の部分が実業の場で活用されるか(そのためには別売りのソフトが必要であるが)、あるいは「しくみ」の部分が読者の価値ある知識となれば幸いである。(「序文」より)

目次

1. 本書で何ができるか
   1.1 何が問題か
   1.2 どんな場合に何ができるか―活用のシーン

2. 人の思考のしくみとその延長
   2.1 わかるしくみ
   2.2 「要するに…」に至る思考のしくみ
   2.3 手計算で思考のしくみを代行し拡張する
   2.4 計算の実用化に際して
   2.5 実用ではカテゴリーがふさわしくない場合がある―グレードで表す
   2.6 ラフ集合論とは

3. 人が行う「不確かな」思考判断

4. 帰納・仮説設定のための工夫と連鎖の発見

5. ラフ集合の分析と他の分析の比較

6. 実際に極小条件を算出するときに必要な要領,注意
   6.1 データサイズ
   6.2 得られた極小条件の扱い
   6.3 得られた極小条件に実際上無意味なものがあること

7. 実施例
   (1) 学習塾で成績が伸びない子を救うために
   (2) 中心市街地を活性化するためにはどこに着目すべきか
   (3) クルマメーカーのVI(ヴィジュアルアイデンティティ)戦略
   (4) 観光地の土産品はどういう人が買うか
   (5) スキンケア化粧品のHP上のメッセージ戦略
   (6) 食品の売り上げを伸ばすための,新聞,雑誌,テレビのPR戦略
   (7) 大豆ペプチドを買う人はどこから情報を得て,どんな健康意識を持っているか
   (8) ファッションに敏感な女性を探る
   応用分野一覧

ラフ集合極小条件計算ソフトの紹介