観光と地域振興

大薮多可志・中島 恵・大江靖雄・細野昌和 共著

観光により地域を振興するための方策を様々な事例に基づいて探る。〔主な内容〕道の駅活用/空港の連携/東京ディズニーリゾートと三鷹の森ジブリ美術館の経営比較/北九州ルネッサンスと新日鉄のテーマパーク事業参入/農業における教育旅行/地域文化的資源と観光需要/交流型漁業経営/着地型情報提供

書籍データ

発行年月 2013年4月
判型 A5
ページ数 224ページ
定価 本体2,400円+税
ISBNコード ISBN978-4-303-56320-2

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概要

 観光立国を推進することを目的に観光庁が2008年に発足し、各種のプロモーションを実施してきているが、日本の観光産業は未だ厳しい状況にある。同年に米国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻し世界的金融危機を誘引し、各国経済は疲弊し日本の観光者も急減した。2011年に東日本大震災が発生し津波被害や放射能汚染が生じ、東北地方は未曾有の被害を被った状態が続いている。日本は大きな試練の渦中にある。その後、日韓の竹島問題、日中の尖閣諸島問題で両国との間では「政凍経冷」状態が続き、日本は厳しい観光交流時代を迎え好転する兆しが見えてこない。とくに、これといった産業に乏しい地方が疲弊したままである。多くの地方では観光交流による経済的な支えが必要である。もちろん、農業や漁業などの一次産業の育成は必須事項である。地域が経済的に自立できない限り若者が都市部に流出し、地方の高齢化が進みコミュニティの維持管理ができなくなる。これは、田畑のみではなく漁港、山や森、川の管理までもが行き届かなくなり、災害や環境問題を誘引し、これまで集落で管理してきた取組も消滅しつつある。地方にとって観光は非常に重要な産業であるのみならずコミュニティを維持する産業である。
 日本の地方において、観光により地域を振興するさまざまな方策が検討され取り組まれてきている。成功事例は少ないが、一つ一つの事例は当該地域の財産であり他地方の方策構築に役立つ。観光には、成功のための唯一の学術的な理論はないといえる。ある地域で成功した事例があるからといって、単にそれを模倣することで成功はしない。さまざまな要因を検討し地域に合致した固有の手法を導出する必要がある。ただ、他地域の成功・失敗事例は十分に解析し参考にすべきである。その意味で多くの事例を広く公表し、各地域の方策構築に貢献させていく必要がある。
 本書の内容は広い分野をカバーし、各分野での現状や成功のための対策を事例としてまとめている。いかなる対策を構築するにせよ考慮しておくことが必要と思われる分野を組み入れたものである。一つの要因のみで観光が活性化されるわけではない。さまざまなアイデアを織り交ぜ地域に合った方策が実施され成功事例に繋がる。その中心は「人」であり、人が活用する資源や情報通信技術(ICT)は必須のアイテムとなってきている。とくに、ICTにより地元の地域資源を詳細に発信していくことは必要不可欠となっている。ガイドブックでは多くの人が求める情報を画一的に示すことに主眼が置かれ、個別に知りたい情報をすべて網羅することは不可能である。改編には多額なコストがかかる。ICTのコンテンツはアップデートすることは容易である。この意味でICTにより着地型コンテンツを発信することが必要である。スマートフォンや多機能タブレットなどさまざまなICT機器が旅先で使用されはじめている。ソフトの提供が後手に回っている状況にある。この現状を把握しコンテンツ作成も含めた方策を立てるべきである。本書で示した事例が地方振興の一翼を担うことを願っている。(「まえがき」より抜粋)

目次

第1章 道の駅活用による地域振興
 1.1 はじめに
 1.2 珠洲市概要
 1.3 SWOT分析
 1.4 住民と観光者へのアンケート
 1.5 まとめ

第2章 新幹線開業に向けた北陸3空港の連携と外客増加
 2.1 はじめに
 2.2 日本の地方空港の現状
 2.3 小松、能登、富山3空港の現状
 2.4 航空機と新幹線
 2.5 北陸3空港の連携
 2.6 外客増加策
 2.7 まとめ

第3章 東京ディズニーリゾートと三鷹の森ジブリ美術館の経営比較
 3.1 研究の背景
 3.2 ウォルト・ディズニーと宮崎駿の人物比較
 3.3 TDRと三鷹の森ジブリ美術館の経営比較
 3.4 まとめ

第4章 北九州ルネッサンスと新日鉄のテーマパーク事業参入
 4.1 研究の背景
 4.2 先行研究のレビュー
 4.3 新日鉄の多角化戦略
 4.4 北九州市の活性化とテーマパーク設立
 4.5 スペースワールドの意義と経済効果
 4.6 民事再生法申請と経営譲渡
 4.7 発見事項と考察
 4.8 まとめ

第5章 農業における教育旅行の活動とその課題
 5.1 はじめに
 5.2 我が国における教育旅行の現状
 5.3 酪農教育ファームの概要
 5.4 酪農教育ファームの経営者意識調査結果
 5.5 むすび

第6章 山形県における地域文化的資源と観光需要との関連性
 6.1 はじめに
 6.2 分析対象
 6.3 文化的資源と観光客数
 6.4 重回帰分析の計測結果
 6.5 食文化についての計量分析
 6.6 むすび

第7章 交流型漁業経営の効率性評価
 7.1 はじめに
 7.2 簀立て体験の現状
 7.3 聞き取り調査の概要と結果
 7.4 DEA分析の概要と結果
 7.5 考察
 7.6 むすび

第8章 観光行動と着地型情報提供
 8.1 はじめに
 8.2 「観光行動」と「観光事業」
 8.3 観光は情報のグルメ
 8.4 最も重要な観光事業「情報提供」
 8.5 モバイルICT活用による情報提供
 8.6 スマートフォンとWi-Fiの活用と展望
 8.7 結果
 8.8 考察
 8.9 まとめ

第9章 外国人旅行者への着地型観光情報提供の課題
 9.1 はじめに
 9.2 観光情報提供の重要性
 9.3 観光情報提供の手段・媒体
 9.4 公衆Wi-Fi活用の可能性の検証
 9.5 公衆Wi-Fiを活用した外国人観光客への情報提供のあり方
 9.6 結果
 9.7 考察