ヒューマンエラーを理解する

―実務者のためのフィールドガイド

シドニー・デッカー 著/小松原明哲・十亀 洋 監訳

事故の最後の引き金を引いた人を処罰しても問題は解決できない。複雑で動的なシステムにおける安全の実現には、「ヒューマンエラーは結果である」という理解のもとでの対策が不可欠である。本書はそのためのガイドブックであり、テクニックではない「安全戦略」を求める実務者にとって、示唆に富んだ内容に満ちている。

書籍データ

発行年月 2010年7月
判型 A5
ページ数 302ページ
定価 3,630円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72994-3

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概要

 果物籠があるとする。そのうちの一つのリンゴが腐ったとき、そのリンゴは「悪いリンゴ」だろうか。それをつまみ出し、新しいリンゴで埋め合わせれば、万事めでたし。二度と問題は起こらないと安心していてよいのだろうか。
 一方、こう考えることもできる。リンゴが腐ったのには何かわけがあるはずだ。たとえば小さな籠に無理に詰め込んでいたので、リンゴに無理な力が加わって傷み、腐ったのかもしれない。そうであれば問題はリンゴではなく、籠の大きさや、そこへの盛り方にあるのであり、腐ったリンゴをただ単に取り替えているだけではだめだ……
 本書はいうまでもなく、後者の立場に立つ。リンゴが腐ったのは何か別の問題の結果である。それならば、腐ったリンゴを奇貨として、何が問題だったのかを探っていこうということである。リンゴだって腐りたくて腐ったわけではない。産業の現場においても、人は、事故を起こしたくて起こしているはずはないのである。過度な生産圧力が加われば、安全や品質がないがしろにされるかもしれないし、中途半端に自動化がなされると、その対応で現場のヒューマンエラーは増えてしまう。そのとき、最後の引き金を引いた人を処罰してみても、何の問題解決にもならない。複雑で動的なシステムにおいての安全を考えるためには、“ヒューマンエラーは結果である”という理解のもとでの対策が不可欠である。本書はこのことを主張する。しかし現実はというと、事故を起こした人を、ヒューマンエラーという言葉の下に責め立て、人のよい面を潰すような対策で終わりとされてしまう例が非常に多い。これでは安全のために組織は何も学べない。ではどうするか? 本書はそのための考え方、進め方、取り組み方のガイドであり、全章にわたって非常に示唆に富んだ内容に満ちている。テクニックではない、安全の戦略を求める実務者にとって、考えさせられることが多いだろう。(「監訳者コメント」より抜粋)

目次

第1章 腐ったリンゴ理論
第2章 ヒューマンエラーの新しい見方
第3章 後知恵バイアス
第4章 データを状況の文脈に当てはめよ
第5章 すべきだったのに
第6章 憤るのをやめて,説明すること
第7章 現場サイドか支援サイドか
第8章 エラーなんて数えられるものじゃない
第9章 原因はあなたが組み立てるもの
第10章 どの事故モデルを選ぶか?
第11章 ヒューマンファクターのデータ
第12章 時間軸を作る
第13章 検討経緯の跡を残す
第14章 では何が悪かったのか?
第15章 組織を考える
第16章 勧告を作る
第17章 安易な対策に飛びつくな
第18章 現場員の責任はどうするのか?
第19章 安全部門を機能させる
第20章 新しい見方の導入ステップ
第21章 がれきの山に立ち向かう人へのまとめ