船用ボイラの基礎と実際【二訂版】

伊丹良治・西川榮一・梅田雅義 共著

船舶の現状に即して、ボイラの概要、基礎、種類と構造、付着品、燃料・燃焼、自動制御、水処理、材料・強度・据付け、取扱いについて、図表を多用して明確に記述。LNG船用主ボイラ、内航船用熱媒油ボイラシステム、自動燃焼制御に用いられるPLCについても詳しく述べられている。2~4級海技士の国家試験問題を各章末に掲載するが、内容は1級海技士問題にも配慮している。船舶機関士またはそれを志す者の教科書、海技従事者試験の参考書として、読者の要望に十分応える内容。

書籍データ

発行年月 2010年5月
判型 A5
ページ数 288ページ
定価 4,180円(税込)
ISBNコード 978-4-303-30561-1

amazon 7net

概要

 ボイラはほとんど完成されたもので、専門書としてはすでに多くの優れた書籍が出版されています。船用ボイラについても、昭和40年代後半頃から、海技従事者の国家試験受験参考書および教科書として、いくつかの専門書が出版されています。その1つ『基本船用ボイラ』(金子延男著、昭和49年初版発行)は初学者のための教科書、また国家試験用参考書として親しまれてきましたが、発行以来30年が経ち、現在の船用ボイラ技術にはそぐわない部分が出てきています。今回、同書を再編するかたちで、新しく執筆することとなりました。
 本書は、現在の船用ボイラに関する内容をできる限り平易に記述したつもりです。船舶機関士またはそれを志す者の教科書として、あるいは海技従事者試験の受験者の参考書として、読者の要望に十分応えうるものと信じています。
 本書の意図した主な点は
 船舶の現状に即した内容にした。たとえば、現状では製造されていないような装置については、基本的なもの以外はできる限り割愛し、現在一般的に利用されているボイラおよび関連装置を中心に記述した。
 基本的な部分を明確に記述するとともに、図表を多く使用して内容を理解しやすいようにした。
 2級・3級・4級海技士の国家試験問題(平成11年7月~平成15年4月まで)を各章の終わりに掲載し、その解答は本文を読めばわかるように配慮するとともに、1級海技士の国家試験問題にも配慮した。ただし、問題自体の内容が古いものの解答は本文中に記していないものもある。
 本書が船舶機関士またはそれを志す方々に活用されることを願っています。

<二訂版に際して>
 著者は本書初版を機関科学生用教科書および新人機関士研修用参考書として約5年間使用してきました。その結果を反映させ、より効率良く効果的に教授するために必要とされる部分について全体に説明を補足、とくにLNG船用主ボイラ(第3章・第4章)、燃料・燃焼制御(第5章・第6章)、および各章末に記した国家試験用演習問題について再編(平成22年2月まで)するとともに、初版の不備な部分を修正しました。また、新たに9.7節を設け、主ボイラの取扱いに必要とされるLNG船蒸気タービンプラントの概要を付記しました。(「はじめに」より抜粋)

目次

第1章 ボイラの概要

第2章 ボイラの基礎
 2.1 水、蒸気の性質
  2.1.1 物性値を表す単位
  2.1.2 水、蒸気の性質
  2.1.3 蒸気の熱計算と蒸気表、蒸気線図
  2.1.4 蒸気のエンタルピ
 2.2 ボイラの伝熱
  2.2.1 伝熱現象
  2.2.2 熱伝達
 2.3 ボイラの水循環
  2.3.1 水循環の重要性
  2.3.2 水管ボイラの水循環
 2.4 ボイラの諸性能
  2.4.1 蒸発量、換算蒸発量(相当蒸発量)
  2.4.2 伝熱面蒸発率、伝熱面熱負荷
  2.4.3 燃焼室熱負荷
  2.4.4 ボイラ効率
  2.4.5 ボイラの熱損失

第3章 船用ボイラの種類と構造
 3.1 ボイラの種類
 3.2 主ボイラの構造
  3.2.1 2胴水管ボイラの構造
  3.2.2 2胴水管ボイラの付属装置
 3.3 補助ボイラの構造
  3.3.1 2胴水管ボイラの構造
  3.3.2 丸ボイラの構造
  3.3.3 立ボイラの構造
  3.3.4 小型貫流ボイラの構造
  3.3.5 熱媒ボイラの構造
  3.3.6 排ガスボイラの構造
  3.3.7 コンポジットボイラの構造
  3.3.8 強制循環水管式排ガスエコノマイザの構造

第4章 ボイラ付着品
 4.1 蒸気止め弁
 4.2 蒸気内管および気水分離装置
 4.3 安全弁
 4.4 水面計
 4.5 圧力計
 4.6 給水弁および給水内管
 4.7 吹出し弁
 4.8 すす吹器

第5章 燃料・燃焼とその装置
 5.1 ボイラに使用する燃料
  5.1.1 重油
  5.1.2 LNGボイルオフガス
 5.2 燃焼理論
  5.2.1 燃焼の種類
  5.2.2 重油の燃焼
  5.2.3 LNGボイルオフガス(BOG)の燃焼
 5.3 燃焼装置
  5.3.1 重油燃焼装置
  5.3.2 LNGボイルオフガス用燃焼装置
 5.4 通風装置
  5.4.1 自然通風
  5.4.2 強制通風

第6章 船用ボイラの自動制御
 6.1 船用ボイラの自動制御の概要
 6.2 ACC(自動燃焼制御)とフィードバック制御
  6.2.1 フィードバック制御
  6.2.2 制御装置
 6.3 船用ボイラのACC
  6.3.1 ボイラ容量とACCの制御方式
  6.3.2 大容量ボイラのACCの概要
  6.3.3 LNG船の自動制御システムとACC
  6.3.4 自動起動停止制御とインターロック
  6.3.5 小容量ボイラの自動起動停止制御とACC
 6.4 PLC制御
  6.4.1 PLC制御の概要
  6.4.2 プログラムの例
  6.4.3 PLCと制御システム
 6.5 FWC(給水制御)
  6.5.1 FWCの水位制御方式
  6.5.2 水位検出器と給水制御装置
 6.6 STC(蒸気温度制御)
 6.7 SDC(余剰蒸気制御)

第7章 船用ボイラの水処理
 7.1 水に含有する物質とその濃度単位と用語
  7.1.1 水に含有する物質
  7.1.2 水処理に使用される用語と単位
 7.2 水に起因するボイラの障害と対策
  7.2.1 スケール
  7.2.2 腐食
  7.2.3 キャリオーバ(気水共発)
 7.3 ボイラ外処理(装置による処理)
  7.3.1 カスケードタンク
  7.3.2 イオン交換処理(軟水装置と純水装置)
  7.3.3 造水器
  7.3.4 脱気器
 7.4 ボイラ内処理(薬品による処理)
  7.4.1 清浄剤の種類と役目
  7.4.2 清缶剤
  7.4.3 スラッジ分散剤
  7.4.4 脱酸素剤
  7.4.5 給復水系防食剤
 7.5 船用ボイラプラントと水質管理基準
  7.5.1 船舶の種類と水質管理基準値
  7.5.2 ボイラの水処理方式
 7.6 ボイラプラントの運転と保守
  7.6.1 補助ボイラプラントの運転と保守
  7.6.2 主ボイラプラント(タービンプラント)の運転と保守
  7.6.3 水質試験の試料

第8章 ボイラの材料、強度と据付け
 8.1 ボイラ用鋼材
 8.2 ボイラ胴板の強度
 8.3 ボイラの据付け

第9章 船用ボイラの取扱い
 9.1 安全管理
 9.2 船用ボイラの運転準備
  9.2.1 運転準備
  9.2.2 点火準備
  9.2.3 点火作業
 9.3 主ボイラのプラントアップとプラントダウン
  9.3.1 点火と昇圧(プラントアップ)
  9.3.2 消火と降圧(プラントダウン)
 9.4 ボイラ運転中の取扱い
  9.4.1 燃焼に関係する注意事項
  9.4.2 当直中の職務
  9.4.3 水位の監視と水面計の試験法
  9.4.4 補助ボイラの給水、補給水系統
  9.4.5 燃焼装置の保守
  9.4.6 すす吹器(スートブロワ)
  9.4.7 ボイラ水のブロー
  9.4.8 当直中に起きやすい故障
  9.4.9 主ボイラの過熱器の取扱い
  9.4.10 節炭器の取扱い
  9.4.11 空気予熱器の取扱い
 9.5 ボイラ停止中の取扱い
  9.5.1 ボイラの内部掃除
  9.5.2 ボイラのソーダ煮
  9.5.3 ボイラの外部掃除
  9.5.4 休缶保存法
  9.5.5 ボイラの検査
  9.5.6 保守関連
 9.6 熱媒油ボイラシステム
  9.6.1 熱媒ボイラとシステム
  9.6.2 熱媒エコノマイザ
 9.7 LNG船タービンプラント(主ボイラプラント)の概要
  9.7.1 タービンプラントの基本構成
  9.7.2 再生タービンプラントの標準構成
  9.7.3 LNG船用主ボイラのACC論理回路と燃焼モード
  9.7.4 付属説明(揚程式安全弁)

三級海技士(機関)口述試験の問題例
工学単位とSI単位の関係
蒸気h-s線図
飽和蒸気表(圧力基準)
LNG船タービンプラント(主ボイラプラント)のヒートバランスの例