軌道上実験概論

宇宙・流れ・生命

小田原修 監修
日本マイクログラビティ応用学会 編

宇宙ステーション時代の微小重力実験について、各分野の第一線の科学者が、理系の学生や若手研究者を対象に解説。人類の宇宙展開/真空と宇宙/微小重力環境/軌道上研究所/流体力学と熱・物質移動の基礎方程式/自然対流/気泡と液滴の運動/結晶成長/デンドライト成長とシミュレーション/熱物性測定/宇宙生物学/植物の宇宙実験/宇宙環境と人間、の各章からなる。

書籍データ

発行年月 2000年4月
判型 B5
ページ数 296ページ
定価 4,180円(税込)
ISBNコード 978-4-303-73410-7

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概要

 日本マイクログラビティ応用学会では、国際宇宙ステーションでの宇宙環境利用ばかりでなく、落下塔や航空機や小型ロケットの利用も含め、今後の日本の微小重力環境利用研究の活発な推進に貢献するために、とくに、若手の研究者・学生に対して宇宙開発と宇宙環境利用への興味と志の高い挑戦する意欲を喚起するために、宇宙飛行士毛利衛氏を代表とした毛利委員会を1995年に結成した。
 その活動の一つとして、「毛利サマースクール」を1996年より行ってきた。1996年には「流れと微小重力」をテーマに岐阜県土岐市の日本無重量総合研究所で、1997年には「宇宙環境と生命」と題し北海道上砂川町の地下無重力実験センターで、また1998年には「宇宙ステーション時代に向けて」をテーマに茨城県つくば市の宇宙開発事業団筑波宇宙センターでそれぞれ実施し、本書はその3年間に実施したサマースクールでの講義を中心に集成したものである。
 国際宇宙ステーションの完成には未だ4~5年必要であるが、見方によってはあと4~5年しかないとも言える。本書を通して、宇宙環境利用研究への可能性を大きくし、来るべき国際宇宙ステーションの本格的利用において、数多くの魅力ある研究が遂行されることを大いに期待したい。(「あとがき」より)

目次

第Ⅰ部 地球と宇宙
 第1章 人類の宇宙展開
  1.1 有人宇宙活動の理念
  1.2 人が行くことによる宇宙実験の科学的有用性
  1.3 人が宇宙から見る地球
  1.4 人が宇宙から見る地球
  1.5 人の地球生命体としての宇宙展開
  1.6 日本人の宇宙飛行
 第2章 真空と宇宙:宇宙真空環境の利用
  2.1 地球から宇宙へ
  2.2 月面での真空
  2.3 スペースシャトル軌道上での極高真空
  2.4 低エネルギー酸素原子ビーム
  2.5 宇宙実験室の真空ポンプ
  2.6 宇宙空間の視界の良さ
  2.7 軌道上研究所の科学者
 第3章 微小重力環境
  3.1 重力とは
  3.2 微小重力とは
  3.3 微小重力環境の形成手段
  3.4 周期的加速度変化
  3.5 微小重力環境と科学技術
 第4章 軌道上研究所
  4.1 歴 史
  4.2 国際宇宙ステーションとJEM
  4.3 軌道上研究所での実験
  4.4 新しい時代―国際宇宙ステーションへの期待―
  4.5 日本の役割
  4.6 宇宙実験の難しさ

第Ⅱ部 流れと宇宙環境
 第5章 流体力学と熱・物質移動の基礎方程式
  5.1 流体の物質収支式(連続の式)
  5.2 輸送現象の基礎法則
  5.3 運動量の収支式(運動方程式, Navier-Stokesの式)
  5.4 エネルギー収支式
  5.5 拡散方程式
  5.6 回転系での流体の運動
  5.7 静水圧
  5.8 輻射伝熱
  5.9 移動現象の解析に必要な数理モデル
  5.10 無次元化と無次元数
 第6章 自然対流
  6.1 基礎方程式の近似表現
  6.2 水平液層内の自然対流の発生
  6.3 容器内の浮力対流
  6.4 表面張力対流
  6.5 液柱内のマランゴニ対流
 第7章 気泡と液滴の運動
  7.1 液滴の静的平衡形状
  7.2 液滴の運動に関する基礎方程式
  7.3 液滴の振動
  7.4 1G下での気泡・液滴の移動
  7.5 微小重力環境下での気泡・液滴の移動
 第8章 結晶成長
  8.1 結晶成長の基礎
  8.2 融液成長における不純物ドーピング
  8.3 組成的過冷却と形態不安定
  8.4 シリコンの結晶成長
  8.5 III-V族化合物半導体のバルク結晶成長
  8.6 微小重力下での融液成長
 第9章 デンドライト成長とシミュレーション
  9.1 対流と凝固の複合過程
  9.2 デンドライトの自己相似成長
 第10章 熱物性測定
  10.1 熱物性値とシミュレーション
  10.2 微小重力環境下で得られた熱物性値
  10.3 宇宙実験準備のために測定された熱物性値

第Ⅲ部 宇宙環境と生命
 第11章 宇宙生物学
  11.1 ゾウリムシと培養細胞
  11.2 宇宙での発生実験
  11.3 宇宙メダカ実験
  11.4 重力の感受機構
 第12章 植物の宇宙実験
  12.1 植物による重力感受
  12.2 微小重力下における運動成長:重力反応との相互作用
  12.3 微小重力下における植物のライフサイクル
  12.4 微小重力下における物質輸送と物質代謝
  12.5 微小重力下における植物の全形成能と細胞融合
  12.6 宇宙環境における細胞分裂および染色体の異常
  12.7 宇宙における持続的生命維持システムと植物
 第13章 宇宙環境と人間
  13.1 宇宙船における長期居住
  13.2 微小重力の人体影響
  13.3 宇宙放射線対策
  13.4 孤立・閉鎖環境の影響

プロフィール

毛利衛 (宇宙開発事業団)=第1章、第2章
小田原修(東京工業大学大学院総合理工学研究科)=第3章
村上敬司(宇宙開発事業団宇宙実験環境利用研究センター)=第4章
今石宣之(九州大学機能物質科学研究所)=第5章、第6章
塚田隆夫(東北大学反応化学研究所)=第7章
西永頌 (東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻)=第8章
石川正道(三菱総合研究所先端科学研究所融合科学部)=第9章
日比谷孟俊(日本電気研究開発グループ)=第10章
井尻憲一(東京大学アイソトープ総合センター)=第11章
高橋秀幸(東北大学遺伝生態研究センター)=第12章
森滋夫 (名古屋大学環境医学研究所宇宙医学実験センター)=第13章