安全管理の人間工学

長町三生 著

災害事故は、人間的要素が介在し、人間の心理的・生理的条件が作用して発生することを明らかにし、その危険要因を、作業者自身が職場から払拭し、また自主的に事故要因に対する感受性を高めていく安全教育の方法と進め方を具体的に解説。
[2012年7月、6版3刷発行]

書籍データ

発行年月 1995年8月
判型 四六
ページ数 192ページ
定価 本体1,600円+税
ISBNコード 978-4-303-73140-3

amazon 7net

概要

 1993年6月にポーランドのワルシャワで開催された国際学会で、ILOのタカラ博士が特別講演を行い、そのなかで先進国の10万人当たりの労働者の事故件数を発表しました。なんと、日本の事故件数は世界で最低であり、アメリカ合衆国が2位でした。日本は、労働災害に関して最も安全な国ということになります。
 この背景には、行政側の努力もあるでしょうが、日本の産業界の安全への取組みに関する熱意がそうさせたといえるでしょう。しかし、まだまだ安心できません。労働災害の防止に成果を上げていない業界、個別企業もあるからです。
 労働災害やヒューマンエラーは、職場と作業者と管理という3大要因の不適合から発生するものですから、それらの適合性を向上させると、災害事故やヒューマンエラーは確実に減少します。職場から危険要因を払拭し、作業者の災害事故要因に対する感受性を高めれば、災害事故ゼロも決して夢ではありません。加えて、安全管理の推進に意欲的に取り組む姿勢が組織側にあれば、夢が実現します。災害事故ゼロは、それほど難しいことではありません。
 安全成績が改善されますと、製品の品質も生産性も連動して向上いたします。ですから、「安全管理は儲かる企業になる道」であるとも言えます。災害事故ゼロをめざすには、経営者や管理者の役割が不可欠です。「安全第一」が口先だけに終わっている企業が非常に多いのも、安全は儲けにつながらないという考えがそのそこに潜んでいるからです。
 災害事故をゼロにする秘訣は、安全感受性を育てることにあります。職場の危険要因を発見して、これを安全なものに変えるのも、管理・監督者や作業者の設備の危険要因への感受性の高低が関係します。仕事をしやすくするのも、守りやすい作業手順を作るのも、良い感受性をもてば可能になります。そして、安全な作業を成し遂げるのも、作業者の安全感受性が大きく作用します。
 このように、災害事故発生の背因を取り除くのは、高度な安全感受性をもつ人間が育つことで実現できるわけです。その方法が本書に解説されているのです。
 経営者や管理者が仕事に活き活きする作業者を見て喜びを感じ、作業者が経営者や管理者を信頼し、仲間と共に働きがいのある安全な仕事を遂行することで、意欲と満足感を感じるような企業になれば、安全で生産性の高い職場が実現します。その考え方とノウハウのすべてが、本書の中に網羅されています。このノウハウを実現した多くの企業で事故件数が格段に減少していますし、このやり方はアメリカでも利用され安全成績を向上させています。
 多くの企業で、安全管理とは何かを理解され、災害事故の一層の減少に、本書が役にたつことを心から願っております。(「はしがき」より)

目次

1章 安全管理の基本的考え方
 1 安全管理とは
 2 災害事故はゼロになる
 3 良き安全管理は儲かる企業を創る
 4 安全管理は人間意識の変革

2章 災害事故の三大要因
 1 いくつかの事故事例
 2 災害事故発生の三大要因
 3 三大要因からみた事故防止対策

3章 ヒューマンエラー
 1 ヒューマンエラーとは
 2 ヒューマンエラーのフェーズ理論
 3 フェーズ理論の検証
 4 ヒューマンエラーの防止策

4章 人間の生理と心理
 1 注意と不注意
 2 眼の機能
 3 大脳機能のリズム
 4 大脳の機能
 5 認知と情報処理
 6 錯  誤
 7 省略行為と憶測判断
 8 ポピュレーション・ステレオタイプ
 9 高齢化と安全

5章 交通事故の心理・生理と防止対策
 1 運転と視覚
 2 夜の蒸発現象
 3 追突事故とその防止
 4 居眠り事故
 5 酒酔い運転
 6 高齢化と車の運転

6章 災害事故ゼロを実現する安全教育
 1 赤みそと白みそ
 2 安全の三層理論
 3 NKYトレーニングの進め方
 4 なぜNKYは効果があるか
 5 NKY活動

7章 安全小集団活動の進め方
 1 安全小集団活動とは
 2 なぜ小集団活動は効果があるのか
 3 安全小集団活動のリーダーの役割
 4 安全小集団活動を支える管理・監督者の役割

8章 安全管理の進め方
 1 安全管理は企業姿勢
 2 安全管理の原則
 3 安全管理は管理能力
 4 安全管理は従業員のセンサを高める
 5 NKY活動の導入
 6 参加型人間工学の勧め