フラクタルと数の世界

西沢清子・関口晃司・吉野邦生 著

フラクタル幾何学と数論を結びつけた、ユニークな本。第1章は数と方程式について、第2章ではフラクタル幾何学を紹介し、区間力学系と複素力学系の理論の概要を示す。第3章で磁性体のイジングモデルと数論、力学系の理論との関連を解説。
[1994年6月、3版発行]

書籍データ

発行年月 1991年12月
判型 A5
ページ数 184ページ
定価 2,563円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72300-2

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概要

 数と図形は、科学の長い歴史の中で、互いに深い関わりを持ってきた。しかし学問の細分化によって、しだいにこの関連が見えにくくなった。その結果、数学でのおそらく最も古い分野である数論と、最も新しい分野である(複素)力学系やフラクタル幾何学との間には、もはや共通の部分などほとんど存在しないと思われるかも知れない。
 しかし、無理数の連分数展開に関わるディオフォントス近似理論と力学系での安定性の問題との結び付きや、磁性体における相転移と、有理関数のジュリア集合、数論における代数的整数の分布問題との関係など、いくつかの深い相互関係が明らかにされつつある。本書では、こうした関連性に視点を置いて、数論と力学系の理論をとらえてみた。 (「はじめに」より)

目次

第1章 数の世界
 1.1 数と図形
 1.2 数の歴史
  1.2.1 正の分数といくつかの無理数
  1.2.2 負の数とゼロの発見
  1.2.3 量を表す数
  1.2.4 複素数
  1.2.5 数の代わりに
 1.3 方程式の歴史
  1.3.1 メソポタミアの粘土板
  1.3.2 中国・九章算術
  1.3.3 ギリシャ
  1.3.4 インド
  1.3.5 アラビア
  1.3.6 イタリア
 1.4 解の公式を求めて
  1.4.1 ラグランジュの分析
  1.4.2 アーベルとガロア
  1.4.3 ガロアの理論
 1.5 代数的整数
  1.5.1 ディオファンタスのリバイバル
  1.5.2 環と代数体の整数
  1.5.3 有理数体の整数
  1.5.4 2次体の整数
 1.6 不定方程式の整数解
  1.6.1 互除法と1次不定方程式
  1.6.2 孫子の剰余定理と連立1次合同式
  1.6.3 連分数と基本単数
  1.6.4 x²-dy²=±4形方程式
  1.6.5 x²-Ny²=±1形方程式
 1.7 計算例

第2章 複素力学系とフラクタル
 2.1 フラクタル―無階層の顕微鏡で覗く世界
 2.2 力学系(反復)理論の復活
  2.2.1 カオス
  2.2.2 ストレンジ・アトラクター
 2.3 漸化式
  2.3.1 不動点、周期点、前周期点
  2.3.2 漸化式
  2.3.3 黄金分割、連分数
  2.3.4 螺旋について
 2.4 ニュートン法
  2.4.1 実関数に対するニュートン法
  2.4.2 ケーリー卿の悩み
  2.4.3 3次多項式のニュートン法
 2.5 領地争いの境界線―ジュリア集合
  2.5.1 前周期点の活躍―滑らかな境界
  2.5.2 2次多項式のジュリア集合
 2.6 5つのサリヴァン領域
  2.6.1 ファトゥー集合
  2.6.2 サリヴァン領域
 2.7 2次多項式の地図―マンデルブロー集合
  2.7.1 熊手分岐―実数の世界
  2.7.2 3周期はカオス
  2.7.3 マンデルブロー集合―複素数の世界
  2.7.4 マンデルブロー集合の有名な景勝地

第3章 磁石と整数
 3.1 磁石と整数
  3.1.1 超越直径で測ると
  3.1.2 イジングモデルと多項式
  3.1.3 算術的整関数
 3.2 代数的整数の分布問題
  3.2.1 フェケット・クロネッカーの定理
  3.2.2 物理学者たちの結果
 3.3 フラクタル集合上の解析学
  3.3.1 カントルの3進集合
  3.3.2 ジュリア集合上の解析学
  3.3.3 フェケットの定理をめぐって
  3.3.4 p進体との関連
 3.4 チェビシェフ多項式と直交多項式
  3.4.1 チェビシェフ多項式
  3.4.2 直交多項式