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ヒューマンエラー
―認知科学的アプローチ― J.リーソン 著 林喜男 監訳 A5・224頁・定価(本体3,200円+税) ISBN4-303-72980-9 ![]() ![]()
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| 概 要 | |
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慶応大学理工学部を定年退職し、武蔵工大に着任をしたとき、まず、ここであと5年間どんな研究をメインとして行おうかと考えた。今まで手がけた研究テーマで未完成のものの中からヒューマンエラーの研究を取り上げ、それを更に続けようと考えた。 その理由はあと5年間しか実験研究が出来ないということと、またますますヒューマンエラーの撲滅が必要な世の中になったからである。もし原子力発電所の事故がヒューマンエラーによるものとしたら、我々ヒューマンエラーの研究をしているものにとって責任は重大だし、事故原因を設計段階までさかのぼるとしたら、大半は人災となるからでもある。 私はいままで事故防止の方法として、Swain流(米国原子力規制委員会)の考え方にのっとって行ってきた。Swain流といっても私流の考え方かもしれないけれども、人間のエラー行動の原因を設備やシステムあるいは環境の人間工学的欠陥として捕えてきた。すなわち、人間と機械のミスマッチが原因となって事故が起こるとし、その原因を追及してきた。手法としてはエラー原因と考えられる要因と人間のエラー行動との相関をとる、すなわち統計的手法を用いてエラー行動を解析してきたが、研究の段階で、多くの人間のエラーは“アフォーダンス”すなわちシステムにエラーを起こす潜在要因があり、その要因に人間がはまりこんでエラーを起こすのではないかということに気がつきはじめた。さらに、ヒューマンエラーというよりソーシャルエラー(social error)といった方がよいものがたくさん見つかってきた。こんな事に研究の矛先を向けていた時に、リーソン(Reason)のヒューマンエラーの本を読んで、共感を覚えた。 ヒューマンエラーの防止方法として、米国でのSwain流と対峙して、ヨーロッパではRasmussen流の考え方があるが、リーソンの本はどちらかといえばヨーロッパ流のものである。 ヒューマンエラーを起こす原因を外部要因と内部要因とに分けて分析していく方法はSwain流と同じであるが、この方法はヒューマンエラーを認知科学的に掘り下げていく点がSwain流と異なっている。 思わずやってしまったといったスリップの原因は何か? こんな事もその人の過去の行動や考えを認知科学的に考察して、事故原因を分析するのがヨーロッパの主流となっている。私もこの点では共感していたので、先ずリーソンのヒューマンエラーの本を熟読することにした。 武蔵工大に来てすぐ、ヒューマンエラーの研究会を企業や他大学の先生方と隔週金曜日にもっていたので、ヒューマンエラーの研究発表会のかたわら、リーソンの「ヒューマンエラー」の輪読会もあわせて行った。 読んで行くと、なかなか示唆に富んだことが書いてあり、ヒューマンエラーを研究している人にも是非一読を勧めたいという念願もあり、海文堂が出版を引き受けて下さったので、我々ヒューマンエラー研究会も急ピッチで翻訳のし直しをした。 しかし、全訳するとべージ数が多くなってしまうので、ヒューマンエラー研究の専門家以外の人でも、あまり抵抗もなく読める本にするのにはどの部分が必要であるかといった点を熟慮して、原書の重要な部分となっている「第3章 行動レベルとエラー形式(スキルベース、ルールベース、知識ベース)とエラーのタイプ」と「第4章 認知的情報不全とエラー形態」を全訳することとし、これらの意味、内容を補完する意図で「第1章 エラーの性質」と「第6章 エラー検出」をほぼ全訳、「第7章 潜在エラーとシステム災害」の中の前半の部分を取り上げ、実例については、例えばチェルノプイルやボパールの事故例については他の本にその詳細がのっているので割愛した。また「第8章 ヒューマンエラーのリスク評価とその減少法」の中でリスク評価は原子力の安全対策の本に良いものがあるので、後半のエラー削減の対策についての項のみを取り上げた。 全般的な考え方は、ヒューマンエラーは何故起こるのか、またどこで、どんな状況で起こるのか、またその対策はどうするのか、といった点に注目して全体を構成した。問題点としては、ヒューマンエラーの認知科学的理解はこの本を読むことによって達成出来るが、エラー削減の具体的対策に欠けるきらいがある。今後、認知科学を認知工学とするよう我々の研究グループによって研究を進めて行くつもりである。(「訳者まえがき」より) | |
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