快適科学
―人間側からみた商品づくりへ―

長町三生 編
A5・248頁・定価(本体2,621円+税)
ISBN4-303-72380-0

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 概 要
快適科学(ComfortScience)とは、人間がある製品を使ったり、ある環境で生活する場合に、その人が満足したり快適さを感じたりすることを実現する科学のことである。つまり、“快適”といった暖味な感情を実現する条件を発見して、それを実現する科学である。

モノがありふれ、自由に購入できる世の中になると、人間のモノに対する要求度はますます高まり、より人間らしさを要望する。物的要求から精神的要求、そして情緒的要求へとエスカレートするものである。それは、私どもが使う製品や環境ばかりでなくて、生活の仕方や労働の世界でも、同様のトレンドで進行していくものである。“感性の時代”という言葉で現代を表現しているのも、モノの量や機能への要求から、ゆとりや豊かさや、気分を安定させる条件を求めている人が多いことを物語っている。

ひとつの例でいえば、15年ほど前は一戸建の住宅の平均面積は40坪であったが、今では50坪あるいは60坪と広がってきた。しかも、洋間の広さは10畳から20畳へと広がっている。これは狭い住宅から広々とした住宅へ、ゆとりのある快適な住空間へと私どもの要望が進化してきたことを示している。ストレスを感じない「広々とした」感じは、空間の面積や天井高という物理量と関係がある。このように、ゆとりとか快適性には物理的要因が絡んでいるのであり、こういった快適性関係要因を分析し、発見し、それを設計に表現することによって、快適さを実現することができるのである。

快適さの基本は、私どもの五官に関係する。視覚(眼)、聴覚(耳)、喚覚(鼻)、味覚(口)、皮ふ感覚(温湿度―皮ふ)、そして内部感覚(体内感受ともいう)まで含めると、六官が快適さを評価するセンサである。私どもは、これらの感覚を使って周りの世界を評価し快適さを測定している。たとえば、自分と他人との間の距離がどれほどであるかが、やはり人と人との快適性に関係する。東京都内の通勤時のJR車内は、まさに不快そのものである。

通商産業省は、このような時代の変化を読みとり、新しい産業の育成のために、快適科学の方向に結びつく“感覚計測応用技術研究開発”のプロジェクトを発足させた。いわゆる“大プロ”である。というのも、これからの新製品開発や環境開発では、人間の情緒的特性、つまり快適性を取り込まねば売れないし、歓迎されないからである。乗用車のような製品はまさにこれに該当するし、トラックでさえ、ドライバーに好まれるか好まれないか、つまり売れるかどうかは、運転席をはじめとする快適性の充実さに関係している。ファッションや住宅や電気製品など、すべて同様に該当する。日本企業がさらに伸びるには、快適性が理解できる企業育成と快適性を実現するツール開発が必要になる。快適科学は今後ますます重要になる新しい科学技術である。

本書は、このような意図をもって、快適科学について解説を試みている。新しい科学であるがために、六官と製品開発についてすべての分野にまたがって解説することができなかったが、これまでにわかっている知識について、わかりやすく述べたつもりである。

この分野に従事する新製品開発・新技術開発の担当者、技術研究者、大学生の皆さんに読んでいただき、ここに盛り込まれた発想や知識を利用していただくとともに、この新しい分野に強い関心をもつ研究者が多く生まれることを期待したい。(「はしがき」より)
 
 目 次
  1. 快適性と感性工学
    • 人間生活のゆとりと豊かさ
    • 感性工学とは何か
    • 感で性工学によるアプローチ
      • 感性工学I類
      • 感性工学II類
      • 感性工学III類
    • 感性工学の方法
      • 感性工学I類
      • 感性工学II類
      • 感性工学III類
    • 感性工学とAI
    • 感性工学の応用
      • 知識工学の応用による感性工学システム
      • デザイン言語としての感性工学
      • 人工現実感技術と感性工学の結合
         
  2. 快適性と匂い
    • 香りの特性と感受性
    • 快適な香りの創作
      • 日本人の香りと外国人の香り
      • 香料の調香
      • 匂いの分類と用語
      • 日本人の香りに対する意識と好まれる香り
      • テスト方法の評価への影響
    • 環境の中での香りの役割
      • 生活の中での香りの重要性
      • 匂いと行動
    • 香りの快適性
      • 香りの快適性の客観的測定
      • アロマコロジーの登場―より快適な香りを求めて
      • 躍進する香りの快適性研究
         
  3. 味と快適性―味の基本特性
    • はじめに
    • 味の基本
      • おいしさと味
      • 基本味
    • 官能による味の測定
      • 機械では測れない味
      • 官能検査とは
      • 基本味の独立性と味の空間
    • 味の強さ
      • 閾値
      • 閾上での味の強さ
    • 味の演算、うま味の相乗効果
      • 相互作用
      • うま味の相乗効果の定量化
      • 調理からみた相乗効果の意味
    • 好ましさに関する味の基本的性質
      • 味自体の好ましさと香りの関係
      • 風味増強効果
      • 好ましさに及ぼすうま味と塩味の相互関係
    • うま味の発見の意義
    • 人間と生物にとっての味覚の意義
      • 人間の味覚感度の普遍性
      • 栄養要求のシグナルとしての味
      • 味に対する本能
      • 栄養生理学的役割
    • おわりに
       
  4. 温熱環境と快適性
    • 住環境と快適性
    • 人体と環境との熱交換
    • 暑さ・寒さの指標と快適な温熱環境
      • カタ寒暖計
      • グローブ温度計
      • 有効温度
      • 不快指数
      • 新有効温度
      • PMV指標
    • 家庭用エアコンにみる快適性への取組み事例
      • 湿度制御
      • 気流制御
      • 温熱快適センサによる制御
      • ファジィ技術やニューロ技術を応用した快適制御
    • 今後の方向
       
  5. 1/fゆらぎと快適性
    • ゆらぎと快適性は現代のトレンド?
    • 「快適性」とは何か
      • 快適性の意味
      • 心地好さを感じさせる感情
      • 快適感を質問票によって測る
    • ゆらぎ現象と1/fゆらぎ
      • ゆらぎとは何か
      • 平均とばらつき
      • 時間的変動とゆらぎ
      • 動的方法でゆらぎの特徴を探る
      • ゆらぎのスペクトル
    • ゆらぎの生理的評価
      • 単調な刺激は慣れが生じやすい
      • 1/f刺激と心地好さ
      • 心拍のゆらぎと心地好さ
      • 脳波リズムのゆらぎ
      • 1/f刺激と脳波のゆらぎ
      • 脳波の周波数ゆらぎと快適感
    • ゆらぎと快適性が意味するもの
       
  6. 照明のアメニティ
    • はじめに
    • アメニティに及ぼす照明の効果
      • 照度
      • かげとつや
      • きらめきとグレア
      • 光源色と演色性
    • 照明のトレンド
    • 最近の照明機器と照明設備
      • オフィス照明
      • 多目的ホールの照明
      • ホテル・レストラン、リゾートの演出照明
      • ビジュアルマーチャンダイジング
      • 住まいのあかり
      • 都市景観照明
         
  7. 住空間と快適性
    • 快適な住環境
    • 住居内外の安全性
      • 住宅地の安全と衛生
      • 高床と防湿
      • 住まいの安全性
    • 室内の快適性
      • 快適環境条件
      • 住居の保温設計
      • 換気と室内空気
      • 鼻アレルギー
    • 騒音
      • 住生活と騒音
      • 騒音防止
      • 集合住宅の騒音
    • 方位と日照
      • 住居の方位
      • ひさしと日照調節
      • 日照時間
    • 住居の衛生害虫
       
  8. オフィス空間の快適性
    • オフィスの快適科学
    • オフィス環境の条件
      • 必要空間量
      • 室内環境条件
      • セキュリティー&リフレッシュメント
    • オフィスのハード
      • オフィスチェア
      • ワークデスク
      • 内装
    • オフィススペースプランニングおよび管理
      • プランニングプロセス
      • オフィススペースプランニング
      • オフィス空間の維持・管理
      • オフィス空間デザイン
         
  9. 自動車の感性人間工学
    • はじめに
    • 自動車と感性人間工学との関わり
    • 負荷の低減と安全性の向上
      • 運転操作性の向上
      • 視界・視認性の向上
      • 乗降性の改善
      • 安楽姿勢の解析
    • 運転支援システムの開発
      • 自動操縦車両
      • 運転支援システム
    • 情報化対応
    • 快適性・感覚親和性の向上
      • 空調快適性
      • スイッチ触感
      • シート着座性
      • オーディオ快適性
    • 感性訴求・快感訴求
      • 運転の総合制御システム
      • インテリアの感性訴求
    • 個性・自己表現の媒体
    • 社会・自然との調和を重視した快適性への広がり
    • まとめ


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