エネルギ技術者の熱流体トレーニング

刑部 真弘(東京海洋大学)著
A5・144頁・定価(本体2,000円+税)
ISBN4-303-32912-6
初版2004年9月発行


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 概 要
近年、資源有効利用のためにエネルギシステムの高効率化が進められるとともに、地球環境への負荷低減のために革新的な新技術が導入されつつある。海洋や航空宇宙における船(シップ)においては、目的地まで安全に到達するための高い信頼性や冗長性も同時に要求されている。

また、陸上においては、従来の巨大な発電所に代わって、中小型の分散電源をネットワークで結んだシステムが注目されている。巨大な発電所を低負荷で運転するよりも、分散させた電源の稼動数を変化させたほうが、より高効率にしかも柔軟に負荷変動に対応できる可能性があるからである。また同時に、近隣のオフィスや住宅などで発電に伴って発生する排熱を暖房や冷房などに利用できるメリットもある。このような流れは、コンピュータの世界で、大型汎用コンピュータに代わって高性能になった小型パソコンをネットワークでつないだシステムが優位になってきたこととよく似ている。

これらの結果、航空または舶用に開発されたエンジンが客船や航空機に採用されるのみならず、陸上用分散電源としても使用されるようになってきた。また、急速に開発が進む燃料電池車は、自宅などの車庫に帰った場合、その居住地域へ電力および熱を供給するエネルギ源となることも可能である。このように、海洋、航空宇宙および陸上におけるエネルギシステムの技術は急速に融合しつつある。新技術の導入とともに、これらのシステムは進化し続け、非常に複雑なものとなっているため、それらを設計製造するときのみならず、運転・維持管理する場合にも熱流体工学の「考え方」が非常に重要となってきている。高度に進化し複雑となったエネルギシステムの、これまでの事故は、運転員または設計者の熱流体工学に関する思考トレーニング不足によることが少なくない。

本書は、著者が約25年間の研究開発生活の中で感銘を受けた熱流体現象についての「考え方」を一つ一つ示しながら、熱流体工学の基礎全般を解説した。たとえば、怪しい浮力利用永久機関、ネズミの繁殖と渦、衛星写真に写る巨大カルマン渦、サメ(鮫)肌の秘密、うがいのメカニズムと原子炉事故、無重力での熱流動現象、深海火山の沸騰、スケート滑走のメカニズム、沸騰と日本刀との関係、汚れの伝熱促進、減圧沸騰と特異な臨界流、排ガス中に潜む膨大な熱の回収などである。これらの現象についての基礎知識を知っておくことも重要であるが、それらのメカニズムを理解するための思考トレーニングがもっと大事だと考える。そのためには、まず「おもしろい」と思うことであり、その次に「なぜだろう」と考えることである。

本書では、この目的のために、わかりやすい大きな図をたくさん取り入れるとともに、できるだけ平易な言葉で説明するようにした。熱流体工学の基礎的な「考え方」をしっかりと持ったエネルギ技術者が、新時代の革新的な新エネルギシステムを切り拓くとともに、我々の生活に密接したエネルギシステムを安全に維持管理していくことを期待している。(「まえがき」より)
 
 目 次
準備運動
      【怪しい浮力利用永久機関】

1章 単相熱流動
   1.1 基礎方程式
      【運動量の変化は力】
      【方程式中の暴走および抑制項】
      【運動方程式の双子の兄弟】
      【自動的に出てくる無次元数】
      【アナロジとは】
   1.2 層流と乱流
      【ネズミの繁殖と渦】
      【衛星写真に写る巨大カルマン渦】
      【サメ(鮫)肌の秘密】
   1.3 数値計算の基礎
      【最も簡単な例】
      【方程式の暴走を抑える方法】
      【LES、DNS、k-εとは】

2章 二相熱流動
   2.1 基礎関係式および定義
      【気泡を固定したら】
      【容積流量比はボイド率の指標】
      【実際は非平衡】
   2.2 流動様式
      【無重力での流動現象】
      【球の最大充填率74%】
   2.3 圧力損失
      【二相増倍係数】
   2.4 ボイド率
      【“くらげ”型気泡】
      【ボイド率を与える】
   2.5 二相流の分配
      【分配の巧妙なノウハウ】
   2.6 トップフラッディング
      【うがいのメカニズムと原子炉事故】

3章 相変化現象
   3.1 沸騰曲線と開始条件
      【台所にもある高性能伝熱】
      【沸騰と日本刀との関係】
      【深海火山の沸騰】
      【スケート滑走のメカニズム】
      【非常に激しい減圧沸騰】
   3.2 核沸騰熱伝達
      【汚れの伝熱促進】
      【無重力での沸騰現象】
      【濡れ性と不純物】
   3.3 膜沸騰熱伝達
      【式できれいに記述できる唯一の沸騰現象】
   3.4 限界熱流束
      【新流体力学モデルの登場】
      【Collierと植田の概念図】
   3.5 フラッシング現象
      【減圧沸騰と特異な臨界流】
   3.6 排ガス潜熱回収
      【排ガス中に潜む膨大な熱の回収】
      【不凝縮ガス濃度全域の新アナロジ式】

付録:排ガスの物性値の計算方法


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