海上物流を支える若者たち

―内航海運と船員のいまを知る

森 隆行 著

物流インフラとして、そして災害時などの安全の確保に重要な役割を果たしている内航海運だが、その知名度は低い。本書は、居住・通信環境の改善がすすみ、女性の進出も増えている内航船の世界を、様々な船種で働く若い人たちへの取材に基づくルポや、海運会社、教育機関などのキーマンへのインタビューを通じて紹介する。

書籍データ

発行年月 2019年5月
判型 A5
ページ数 158ページ
定価 1,760円(税込)
ISBNコード 978-4-303-16416-4

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概要

 四方を海で囲まれた我が国においては、古くから「船」が輸送手段として重要な役割を果たしてきました。江戸時代には、菱垣廻船・樽廻船や北前船などによって日本全国が海上ネットワークで結ばれていました。近代になるとトラックによる陸上輸送が国内物流の中心となりましたが、それでも船による物資輸送の割合は全体の4割(輸送活動量、トンキロベース)を超えています。海上輸送を担う「船」は、日本の社会と産業にとってなくてはならない存在であり、その「船」を動かすのが船員です。
 かつて、船員は憧れの職業であり、尊敬される対象でした。昭和の半ばには美空ひばりをはじめ多くの歌手が「マドロス」をテーマにした歌を歌っています。しかし、現在は、船員の仕事は「3K(きつい、きたない、帰れない)として若者には人気がなく、内航海運業界では、船員の高齢化、船員不足が大きな問題となっています。
 かつては、人の移動も貨物の輸送も船を使うことが一般的であり、船は身近な存在でした。現在、人の移動は鉄道や車、飛行機が中心であり、船を利用することは、フェリーなど一部を除いて一般的ではなくなり、遠い存在になってしまいました。その結果、船や船員のことを知る機会が少なくなったというのが船員不足問題の背景にあるように思えます。船員の仕事は特殊な教育を必要とする、一般人とは関係のない世界の仕事だと考えられているのではないでしょうか。確かに、船員の仕事は、その勤務形態を考えると少々特殊かもしれません。しかし、現在では、船員になるにもいろいろなコースがあります。普通科の高校や一般大学を卒業して船員になる人も少なくありません。また、古来より船は男の職場と考えられていましたが、最近は、女性を積極的に採用する海運会社も増えています。
 本書の目的は、多くの人に船員という仕事を知ってもらうことにあります。そして、この本を読んで、船員になろうと考えてくれる若者が出てくれることを願うものです。(「はじめに」より抜粋)

目次

序章

第1章 船員カタログ
 1 内航船とは?
 2 内航船の船員(職種)とその仕事
 3 船員になるには?
 4 内航船の分類(定期船と不定期船)
 5 内航船の種類(船種・船型)

第2章 7人の船員物語
 1 イコーズ株式会社 大畑幸三(コンテナ船「さがみ」一等航海士)
 2 川崎近海汽船株式会社 亀山遥(RORO船「第二ほくれん丸」三等航海士)
 3 旭タンカー株式会社 村井信広(タンカー「新旭東丸」二等機関士)
 4 白石海運株式会社 渡邊晶子(タンカー「大島丸」機関員)
 5 早駒運輸株式会社 永井康夫(タグボート「早雄丸」一等航海士)
 6 新日本海フェリー株式会社 定益春香(フェリー「あざれあ」船客部ショップマネージャー)
 7 株式会社キョウショク 田中奈津美(RORO船「王公丸」司厨長)

第3章 船と船員に関するQ&A ~船主座談会~
 岩崎汽船株式会社常務取締役 岩﨑泰整
 下林汽船有限会社代表取締役 下林健人
 有限会社新東汽船専務取締役 江木賢一
 丹羽汽船株式会社代表取締役 丹羽耕一郎

第4章 内航海運関係者に聞く
 1 日本内航海運組合総連合会会長 小比加恒久
 2 白石海運株式会社取締役 白石紗苗
 3 福寿船舶株式会社海運部課長 岡部涼子
 4 国立波方海上技術短期大学校校長 澤田幸雄
   同校学生 本郷俊介・黒田寧音・横川竜也
 5 海洋共育センター理事長 蔵本由紀夫

第5章 内航海運が抱える課題と今後の展望
 1 内航海運が抱える課題
 2 内航海運暫定措置事業の終了に伴う動向
 3 SOx問題
 4 「登録船舶管理事業者制度」導入
 5 自律運航船と船員不足問題
 6 外国人船員導入の可能性
 7 内航海運の今後の展望

解説
 (1)オーナーとオペレーターはどう違うの!?
 (2)船舶管理会社って何をする会社!?
 (3)「カボタージュ」って何ですか!?
 (4)操舵号令って何ですか!?

取材協力者・団体・企業一覧

プロフィール

森 隆行(もり たかゆき)
 1952年 徳島生まれ。
 大阪市立大学商学部を卒業後、
 大阪商船三井船舶株式会社(現・商船三井)に入社。
 2006年、商船三井を退職し、流通科学大学教授に着任。現在に至る。

 タイ王国立メーファルーン大学客員教授
 大阪市港湾審議会会長
 日本海運経済学会副会長
 日本ロジスティクスシステム協会(JILS)関西支部運営委員会委員長

 著書:『現代物流の基礎』(同文舘出版)
    『大阪港150年の歩み』(晃洋書房)
    『神戸客船ものがたり』(神戸新聞総合出版)
    『神戸港 昭和の記憶』(神戸新聞総合出版)
    『水先案内人』(晃洋書房)他

その他

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